そんな風に死にたくはない

カテゴリー「心霊・幽霊」

今から、10年以上前の話。

俺の家は長屋で、隣に40才位のおっさんが、独りで住んでいた。
小学校が夏休みに入ったころ、家の周りに、ひどい悪臭がするようになった。
おっさんが亡くなって、腐り、蛆だらけで発見された。

それから、すぐに、おっさんの幽霊がでるとか、見たとか、噂が立つようになった。
俺の親なんかは、一笑に付していたが、俺は半信半疑だった。

そんな、ある晩。
俺は寝ていたので夜中だったのだが、表で「ギャーッ」と悲鳴が聞こえた。
その声に、最初に反応して、窓を開けたのは、俺の斜め向かいの家、つまり、おっさんの向かいの家だった訳だが、開けて見たおばさんも、顔面蒼白で悲鳴をあげた。

街灯に照らされた、おっさんの家の窓に、おっさんの顔が、はっきりと映っていた。
俺の父親も飛び起きて出ていったが、それを見て固まっていた。
母親と俺に「来るな!」と言った。
表の男性は、尻餅ついて、震えていた。

父親が、悲しげな顔をして、「ほおか、さびしかったんか、辛かったんか」と言った。

父親の目から涙が出ていた。
なんか、緊張感がとける感じがした。
おっさんの顔は消えていた。

その後、幽霊話しは聞かなくなったが、借手が付く事はなかった。
今は、俺の家共々、取り壊され、分譲住宅に変わっている。

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