ある意味、貞子状態

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

私の田舎では有名な怪談めいた話。

今から30年以上前、ある妊婦さんが亡くなったそうだ。
死因は散歩の途中で高い所から田んぼに転落して頭を打った事により首の骨を折った事。

当時は土葬だったので八角形の大樽のような棺に入れられ膝を抱えた体育座りの様な格好で埋葬された。

埋葬直後から村の人達の間で女の幽霊話しが持ち上がった。
墓地の近所に住む人は女の泣き叫ぶ声を聞いた。
また昼間でもそこを通りかかった人が、不気味な地の底から響くような女のうめき声を聞いたりしたと言う。

不謹慎ではあるが、やはり臨月で亡くなってしまった妊婦の霊がさ迷っているのではないかとの噂が立った。

それから2~3年後、詳しくは私も分からないが恐らく法律の関係上最近土葬された遺体を火葬にし直す事になった。

3人の仏さんが処置される事になったが、その中にあの妊婦も入っていた。
村の若い衆と遺族らが掘り起こし火葬場へと運ぶ訳だが全て手作業で行われる為、かなりの重労働だったらしい。

二体の搬出が終わりいよいよ例のお墓の掘り起こしが始まる。
みんな口には出さなかったが気味悪がっていた。
異様な空気が漂う。

2m程掘り下げたところで棺の蓋が見え始める。
特に変わった様子はない。
更に棺の周りを掘りロープを掛ける。

やぐらに取り付けたチェーンブロックにロープを繋ぎ引き上げた。
久し振りに地上に現れた棺は白から黄土色に変色し、時間の経過を感じさせた。
神主さんがお祈りを済ませ遺族が棺を開ける。

開けた瞬間遺族が声をあげた。
周りの人間も何事かと棺を覗き込んだ途端悲鳴を上げて後ずさった。

それは見た者を恐怖に陥れるのに充分な代物だったと言う。
他の二体に比べあまりに不自然だった。

狭い棺の中で暴れた様な形跡。
足はがに股に広がり背中を大きく反らし顔を棺の蓋に押し付けていた。
口が裂ける程に開いたミイラ・・・それが妊婦の姿だった。
そして傍らには小さな遺体も・・・。

遺族らは涙を流しながら二人を再度手厚く葬ったと言う。
埋葬後に生き返ったとしか思えない状態だったが、それは有り得ない事だった。
そして村人らが聞いたと言うあの声も。

この話しは今では村のタブーとなり語る人も少ない。

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