何故か僕、普段からおかしな物をたまに見るんですよ。
例えば真っ黒な人影とか、彗星型のUFOとか。
後は自分1人しかいない部室で背後のドラムが突然鳴り出したり、寝ていると誰も蛇口をひねってないのに、水のしたたる音が聞こえたり。
もう数え切れないですね。
でもこれまでたいして恐いと思った事はなかったんですけど、「これは嫌かな」って思った話をしようと思います。
あれは約3年前、僕は中学3年生だった頃の話なんですけど。
その日僕は仲の良いT先輩と一緒に帰る約束をしてたんですけど、先輩が三者面談で遅れちゃって。
その間、僕は廊下に座り込んで終わるのをまってたんですよ。
そしたら何故かわからないんですけど、突然すごい寒気に襲われて。
背筋が張り付くっていうか。
最初の方は「疲れてるんだなぁ」と思って、たいして気に留めなかったんですが、悪寒もいやな気配もまったく消えず、それどころかどんどん嫌な気配は強くなってくるんです。
気味が悪くなって立ち上がろうとしたその時、僕の左側にある階段から「カツーン」と誰かがヒールで降りてくる音がしたんです。
保護者の人か?と思ったんですけどどうやら違う様なんです。
カツーン、カーン・・・。
音がどんどん早くなってきます。
よく聞くと女の人の笑い声のようなものも聞こえてきて・・・。
だけどその笑い声、おかしいんです。
始めはクスクスと笑う程度の笑いかただったんですが、階段を下りてくる音の速度に比例して、どんどん笑いかたが恐ろしくなってくるんですよ。
「カツ、カツ、カツ、カツ、カツ・・・」
ひ・・ひひひ・・・ひゃっはっはっはっぁ!!!
『これはやばい、逃げよう』と思ったのですが体が動かないんです。
靴音と笑い声がMAXになって、体が動かなくて・・・。
「もうだめだ!!」と思ったとき・・・。
音がぴたり、と鳴り止んだんです。
そのとたん教室のドアがガタンと開いて「何してんの?」と。
そうです、先輩の三者面談が終わったのでした。
さっきまでの重い空気がはれ、緊張の糸がきれた所為か、僕はその場にへたり込んでしまいました。
その姿を見てT先輩のお母さんは異様な表情をしました。
よっぽど自分は変な顔をしていたんだろうと思い、すぐに顔を作り、何もなかったように3人で帰ったんです。
後日談。
T先輩から電話がきまして「この間一緒に帰ったよねぇ。あのさぁ、あんたと別れてから母さんから聞いたんだけどね。あの時、あんたへたり込んでたじゃん。その時あんたのすぐ隣に髪の長い女の人が、ずーーーっと立ってて、あんたのこと、見てたらしーよ」と。
ちょっと待て。
ってことはあのヒールの音と笑い声は。
しかもあの時のT先輩のお母さんの表情・・・カンベンしてくれ(泣)・・・。
という話なんですけど、どうですか?ウソ臭いけど、本当なんで。
信じたってください。