ドブから這い上がってくる者

カテゴリー「心霊・幽霊」

オレは夜たまに河川の堤防をジョギングするんだ。

三日前のこと。
曇ってて雨が降りそうだなと思いつつも出発。
いつもなら数人とすれ違うのだが、天気が悪いので誰とも会わずに闇夜に自分一人の状況だった。
かなりの距離を走り、疲れも出てきたので、そろそろ引き替えそうとした時、前方に人がいるのを発見した。

いつもすれ違う人には挨拶をしてるのでその人のトコまで行って、挨拶をして引き替えそうと思い、今日初めて会う人だから足取りも軽かった。

しかし、ふとおかしなコトに気付く。
先程から走ってるのに距離が縮まらない。
後ろ姿を確認するが走ってる様には見えないのに・・・。
しかも、始めは気付かなかったが、周りが暗いので10~20m先しか見えないのにかなり遠くの位置から見えていた。

だんだん寒気がしてきて、これはヤバい!引き替えそう!と思った時、前の人が急に見えなくなった。

どこに行ったのか?
堤防下に下りたのか?

なら生きてる人間だと決め付け、自分を納得させて、引き替えそうと振り向いた時、目の前に正面を向いたそいつがいた。

若い男の様で肌はどすグロく、目が白内障の様に濁り、異様に赤い舌は顎の下まで垂れており、小刻みに触れていた。
そいつは「お・・まえ・もか・・・」と言い、硬直して動けないオレの周りをゆっくりとしかし顔だけはオレの方を向いたまま歩いている。

後ろから突然、右頬をベロッと舐められ「おま・・・え・・はちがう・・な・・」と耳元で囁かれ、恐怖のピークに達したオレは全速力で走って家まで逃げ帰った。

疲労もピークに達していたが、舐められたトコと全身冷や汗をかいており、気持ち悪いのでスグにシャワーを浴びる様にした。

鏡で舐められたトコを確認すると茶色くなっており、ドブの様な匂いがしている。
その日は恐怖で一睡も出来なかった。

昨日はだいぶ恐怖心も薄れ先日の出来事はなんだったんだろうと思い、夜は恐いから昼間に確認に行った。

普段と変わらない堤防であったが、あいつと遭遇した付近にはドブが流れ込んでおり、ボロボロになったグローブが堤防の斜面に捨てられており、強烈なドブの匂いを放っていた。

ドブの匂いであの時の恐怖が甦り、スグにその場を立ち去った。

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