墓参りに行くとおびただしい数の・・・

カテゴリー「心霊・幽霊」

私の母親は小学校の教師をしていて、よく姉と私〔弟〕を勤務先の学校に連れていった。(無論平時の時ではなく夏休みとか長期休暇の時だけである。)

その理由は3つあって、一つは父親が自宅で働いているためガキがいると集中出来ないから。
二つは母の有給があまり残っていない為に、夏休みでも母は学校にいかなくてはならなかったから。

そして3つ目は母の有給休暇を減らした最たる要因である病弱な姉の側に、少しでもいてあげるためだった。

姉は生まれもった難病を抱えた上に、筆舌し難い不幸、災難に恵まれた人であり、且つ霊山の大僧正クラスの人から跡継ぎをオファーされるくらいの霊感を持ち合わせた人でもあった。(因みに姉の病気は最近完治した。オファーは未だに止まるどころか激しくなっているという・・・結構有名な霊山らしいので詳しく書けないことは勘弁してください。)

彼女に纏わる話を一つあげてみる。

私が小三の時。
久し振りにお盆に母方の墓参りをした時ののことだ。
場所は東京。
早め茹だるような暑さの中、私達家族四人は駐車場に車を止めた後、母が寺の住職から線香を貰う間に父と姉と私の三人で生前叔父が好きだったカンコーヒを買いにいった。

先行する父の後を、私はよちよちとついていった。
だが、ふと振り帰ってみるといるはずの姉の姿がない。
父も直ぐにいないことに気付き、二人で寺の方に戻ると、姉がじっと墓の方を向いていた。

父が声を掛けると、ゆっくりこちらを振り向き、気持ち悪くなった時の顔でトボトボとこっちに歩いてきた。
姉の顔を見て直ぐ様父は「車の中で待ってるか?」と言ったが姉は首を横に振るばかりでずっと黙っている。

そして、カンコーヒを買って母と合流し、墓石に掛ける水と用意し、花束を持って墓のある区域に入る時だった。

姉が急に泣き出したのである。
そして急にしゃがみこんだかと思うと、両手を頭につけてブンブン振り回し始めたものだから、異常事態になれっこの両親も流石に慌てていた。
私は何が起きたのか解らず、姉の変貌振りにただ呆然としていた。

姉は直ぐ様父に抱っこされて車に連行。
その間母は寺の住職を呼びに行った。

祖母へ無償で仏壇を贈ってくれるくらい懇意のある寺だったことも幸いして直ぐ様住職は駆けつけてくれた。

以前にも姉がおかしくなった時があったが、その時より事態は深刻に見えた。

車の中は異様だった。
ただひたすら泣きじゃくる姉の背中を擦りながらひたすら何かを唱える住職。
その隣で震える姉の手を両手で握る母、それを運転席から身を乗り出して真剣な表情でみつめている父。

後部座席のドアが開けっ放しなこともあってか、クーラーを全開にしても車内のいやな熱気が中々落ちないのを今でも身体が鮮明に覚えている。

そして、しだいに姉の発作?は収まってきて、口が聞けるまでになってきた。
母の問いかけに少しずつ姉が何かを答え始めた。

それによると、墓の中がびっちり霊魂でぎゅうぎゅう詰めになっており、それらがそれぞれ墓を仕切っている柵を乗り越えて姉がいる方に向かってぐちゃぐちゃ蠢いてきたのが見えてしまったのだという。

しかもうごめき始めたのが、姉が墓の前に近づいた途端(つまり缶こーひの時点では霊魂は普通の状態だった)らしい。

ここまでの話を纏めると・・・墓を囲う柵の内側から出ようとはみ出んばかりの数の見えない霊魂(住職によるとお盆だから一杯いた)が一度に姉(姉は当時小四)へ迫ってきた、ということになる。

そりゃ泣き出しますよね・・・。

住職によると姉は憑かれてはいないようで、ただおびたただしい数の霊魂をみて驚いただけだろうということだった。
それ以来姉は暫く墓参りを自粛した。(今は平気です。)

学校の方に戻ろう。

ある夏休みの日、私が職員室でお菓子を食べている間、姉はだれもいない校舎の中を探検していた。

他の学校を見るなんてことは普段ないので、好奇心の強かった姉にとって学校探検はうってつけの遊びだったのだ。

それに夏休みは春休みと違ってクラス移動する先生とかが教室にいなく、扇風機のある職員室に籠っているから色々自由にできたのもある。

だれもいない教室、廊下、トイレ・・・図書室、や理科室などの特別教室は窓から覗くように観察して一つ一つ回ったそうである。

そして三階の一番端にある最後の教室を見終わった姉は職員室に戻ろうと西階段を三階から二階にかけて降りていた。

と、鏡が2つついた踊り場を一回曲がり、二階に着く段の中腹を降りている時だった。

何を思ったのか、いや誰かの気配を感じたのか振り替えると、三階から誰かが降りてくる影が見えたのだという。
姉はこの学校の先生だと思い「会いたくない」ので足音を立てないようにそろそろと一階に降りようとしたのだけれども・・・全然足音が聞こえて来ない。

不振に思った姉はちょっと階段を登って確認したら、まだ影はちゃんとそこにあって順調に階段をおりているという。
音をたてずに。

姉が呆けていた次の瞬間だった。
影が凄まじい勢いで階段を降りてきたのだ。

踊り場の壁を黒い線が一瞬で通りすぎ、姉がいる階段へ壁を伝って迫ってくる。

姉は反射的に体を動かして階段をかけ降りた。

降りて降りて、母のいる職員室に向かおうとした。

後ろを振り返らず、ただ真っ直ぐ階段をかけ降りた。
そして一階に着き廊下を走った時だった。

後ろから『廊下を走るな』と、鋭い怒声が、誰もいない廊下を響きを使って木霊させるような声が・・・男の声が・・・姉を背後から襲った。

以後、後日談。
母の話で分かったことだが、そこは「曰く付き」の学校として有名なんだそうだ。

以前、その学校の校庭で創立記念の航空写真を撮ったら生徒の手だけ消えていたことがあったらしい。
影の正体は姉曰くこの学校に登校していた少年。

声の主はまあ教師じゃないかと・・・笑って言っていました。

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