あの日、俺は無数に連れ帰ってきた

カテゴリー「心霊・幽霊」

盆休みに親父と二人で三陸の様子を見に行ってきたんだ。

他県ナンバーの車に乗った暇人どもが、パシャパシャ瓦礫の山を撮っていた。

『クソ虫ども祟られて死ねと・・・』

心の中で呪いの言葉を吐きながらその場を後にした。

その帰り、親父の実家に立ち寄ったんだけど、叔母に「随分と沢山引っ張ってきたねぇ。引かれなかったかい?」と薄気味悪いことを言ってきた。
叔母は俗に言う「見える人」じゃないんで、その時は冗談だと軽く流した。

その夜、親戚とか近所のおっさんたちが集まって盆の宴会が始まった。
俺も酒好きなんで、しれっと参加しておっさんたちのご機嫌取ってた。

そのうち、おっさんのひとりがふいに「これやる」と、京都で買ってきたとかいう手首に巻く小さな数珠をくれた。
手首に数珠巻くのは俺のクソ田舎で流行っているので、ありがたく頂戴した。

宴会が開けたあと、長時間ドライブでだるかったんで10時前には布団に入った。
親父はまだしばらく叔母さんと話し込んでるようだ。

深夜、いきなり背中を蹴飛ばされて目が覚めた。
振り向くと隣で親父がばたばた暴れている。

親父:「ふざけんな酔っ払いすぎだ。自分の布団に戻れ」

軽く寝言で怒鳴って寝たみたいだ。

だが親父は目が覚めたらしく「悪いな。暑苦しくてな」と詫びながら大人しくなった。

言われれば窓を開けてるのにやたら蒸し暑い。
二人で暑い暑い呻きながら朝を迎えた。
殆ど眠れなかった。

朝、飯を食って親父の実家を後にした。
墓参りを済ませて自宅に戻った。

自宅で資格の勉強をしながら、ぼんやりと昨日のことを回想していた。
叔母さんあんな黒い冗談を言う人だったかなぁ・・・とか、面識のない奴にいきなり数珠ってあり得ないだろ・・・とか。

その夜も、例によって疲れてたんで、早めに寝た。
寝苦しかったが、昨日に比べれば全然マシだった。

朝、目が覚めて気が付いた。
親父の実家の寝室の蒸し暑さが異常だったことに。

親父の実家は自宅の約100キロ北で例年3~5℃くらい涼しい。
一昨日の夜の気温を調べたら、26℃。
経験上、体感気温は30℃を越えてた。
まるで雨の日の満員電車にいるみたいに。

もう言いたいことはわかると思うが、あの日、俺と親父は確実に三陸から引っ張ってきてて、その夜はそいつらに夜通し囲まれてたっぽい。

霊感が皆無なのと、貰った数珠が効いてるのか、今のところ霊障はないけど、俺は何となく不安で数珠を肌身離さず身に付けている。

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