彼女はそうなる事を全て知っていた

カテゴリー「心霊・幽霊」

駅前を歩いてたら、すごく変なナンパをされて人生が完成した話する。

妻との馴れ初めなんだが、多分このスレの趣旨に合ってる話だと思う。
長いから、飽きたら読み飛ばしてくれ。

俺は小さい頃、一年に一度くらいの頻度で同じ夢を見ることがあった。
中学生くらいまで繰り返し見たので覚えてしまったのだが、シロツメクサみたいのがところどころ咲いてる野原みたいな場所を、ちょんちょんと左右の三つ編みにした幼女が走り回ってる、ていう夢。

この夢を見るときは、なぜか分からないけど、今まで感じたことのないような種類の幸福感を感じられて、密かに見るのが楽しみだった。

高校生くらいから見なくなって、そんなこともすっかり忘れ社会人になったんだが、休日に本屋へ寄った帰りに「すいません」と女性から肩を叩かれた。

えっ俺?

ヘッドフォンを片耳だけ外して、「はい?」と返すと、神妙な顔で「私と、どこかで会いませんでしたか?」と聞かれた。

あれ、知人か!?と思いまじまじと顔を見てみたが、全然思い出せない。

なんだ?と思いつつ「いや、多分人違いです・・・・・・」と半笑いで答えたが、女性は気まずそうに「そっか、そうですよね・・・・・・すいません」と俯いた後、急にバッと顔を上げ、「あの!一目惚れしたんですけど!付き合ってくれませんか!?」と言ってきた。

そこでやっと、あっこれナンパか!と気付いた。

全くモテなかった俺は、リアルに女性から告白されたという事実に舞い上がりまくり、「あっどーも・・・・・・w」とかちょっとかっこつけながらペコペコして、女性も笑いながら「それじゃ連絡先教えてもらっていいですか?」と携帯を出してきて、その日以来、連絡を取るようになった。

俺は友人達に「なんか~ナンパされて~彼女出来たw」と自慢しまくって調子に乗ったが、彼女の方は、なぜかデートしてても連絡取ってても無理してるというか、思い詰めてる感じで、はじめは緊張してるのかな?とか思っていたが、だんだんと、え?俺もしかして好かれてなくね?でも告白されたよな?あれ?となっていった。

それでも、なんだかんだ言いつつ3が月くらいが経ち、今度二人でドライブに行こうかという話になった。

車、という単語を出した瞬間、彼女の顔が能面みたいになって、えっ?と思ったけど、すぐ笑って「ドライブいいね!行きたい」と言うので、なんだろ?と思いつつ出掛けることにした。

当日彼女に会うと、めちゃめちゃでかいリュックみたいの背負ってきて吹き出した。
「ちょw遠足じゃないんだからw」と笑いつつ、わりと田舎だったので、結構な距離をドライブして、普段より都心の方へ出てみたりして遊んだ。

その日の彼女はすごくキラキラして見えた。
やっぱ地味な地元より都心の方が楽しいよな、来て良かったと思った。

ドライブ時間が長かったので、彼女が作ってきてくれたおにぎりとかサンドイッチとか食べて、車内で二人きりで色んな話して、俺もすごく嬉しくて、楽しかった。

それ以来、ときどきドライブデートするようになり、彼女も毎回色んな物作ってきてくれたりして、心の距離も縮まった気がした。

ある日、いつも通り彼女の家の前で彼女を乗せて車を出したとき、彼女が助手席に座るなり、「今日だね、多分」と言い出した。

「えっ、何が?」と聞いたら、「え?私何か言った?」と笑われ、ちょっと怖かったが、今日行く場所の確認とか話し合ってたらすっかりいつものノリになり、普通にデートを終え、夕方過ぎに帰路についた。

季節は冬で、あたりは山道なのもあってもう暗く、明日は氷点下になるらしーね~やべ~wとか話しつつ車を走らせていた。

しばらくすると、なんとなく、彼女の声のトーンが固くなってる気がした。
チラッと顔を見ると、なんだか目が据わっていた。

「どうした?平気?寒い?」と聞くと「うん大丈夫」と答え、そこからあまり話さなくなった。

俺は彼女を怒らせるようなことを言ったかな、と考えつつ、山道のカーブを曲がった。

車体がスーとカーブの外側にずれたかと思うと、遠心力でその勢いのまま、部分的に無くなっていたガードレールの隙間から、すぽーんと落っこちた。

ガガンガガー!みたいな爆音のあと意識が飛んで、彼女に揺すられて目を覚ました。

車はシューと音がしていてよくわからないことになってて、頭が痛いわ目がよく見えないわ、服が濡れてるわで呆然とした。

ふと、彼女が心配になり振り返って、ぎょっとした。

彼女は無傷なのかピンピンしていて(実際は怪我してた)淡々といつものでかいリュックからガーゼや包帯などを出して、信じられない手際の良さで、俺の頭にテキパキ巻きはじめた。

気付かなかったが、俺の頭はぱっくり割れてて、血で服が濡れていたらしかった。

その後、すぐ彼女は携帯で助けを呼び(俺の携帯は圏外だった)、予報通り氷点下の寒さだったので、リュックに入ってたホッカイロとかを俺の身体に貼り、抱き合って身体を温めあった。

血が出ていったせいか、凄まじい寒さを感じ、恐怖で死を覚悟した。
こんな状況にも関わらず、彼女は落ち着き払っていて、なぜか「絶対守るからね」と俺に言った。

俺は不思議な気持ちになった。

しばらくすると、遠くからサイレンの音が聞こえはじめ、二人揃って保護された。

病院で手当を受け、彼女にあの手際の良さはなんだったのか聞くと、突然泣き出して「私、知ってた。」と信じられない話をし始めた。

わかりにくいので、ここからは彼女の話を要約してまとめる。

・小さい頃から、知らない男の人が夜の山道で事故って死ぬ夢を繰り返し見ていた。
・あまりに繰り返し見るので、そのうち、なんとかして助けられないか?と思うようになった。
・助けたいと思っているうちに、なぜか俯瞰ではなく助手席からの視点で夢を見るようになった。
・どんなふうに事故が起き、どこを怪我して、何が原因で死ぬのかまで繰り返し見て把握していたので、助手席目線で夢を見られるようになってからは、男が死なないよう(夢の中で)必要な道具を揃えるようになった。
・そのうち男は助かるのが当たり前になり、まじまじとこちらを見てくるようになった。

初めて俺を見かけたときは、あまりの衝撃で全身から脂汗が吹き出て、吐き気がしたらしい。

当然だよな。
定期的に夢に出てくる男と現実で出会ったら、怖いに決まってる。

はじめて声をかけてきてくれたあの日は、一大決心をして声をかけたそうだ。
本当にただの偶然ならそれまでだけど、もし夢が当たっていたら、ここで声をかけなかったことを私は一生後悔する、と。

正直、全っ然タイプじゃなかったが、友達になって下さい、じゃ気味悪がられて終わりそうだけど、一目惚れですと言えばそれらしく聞こえるし、親しくなればいつかあの場面にめぐり合うはずだから、せめてそれまでは、と思って付き合った、と言われた。

俺はそれを聞いて、号泣した。
最初、彼女が無理してる感じだったことの理由もわかった。

信じられない話だったし、頭打ったせいで俺の頭がおかしくなっているんじゃないか?
むしろそうであってくれ!とさえ思った。

正直、命が助かった喜びよりも、彼女が俺から離れていくだろうことの方に絶望した。

俺が号泣しながら、「それは、別れようってこと?」と聞くと、「○○君はどうしたい?」と聞かれたので、「俺は絶対別れたくない。もう本気で好きになった後だから」と答えた。

このとき俺は、なぜか、絶対に彼女と別れてはいけないという予感がしていた。

当時は、キモブサ低スペックの俺がこんないい彼女を逃したら次なんてない!的な焦りだと思っていたけど、たぶん別れちゃいけない理由を、心のどこかで確信していたんだと思う。

それを聞いた彼女は「私も好きになった。これからも宜しく」と笑った。

それからさらに半年くらい後なので、付き合って約一年で結婚した。
結婚して二年後には子供が産まれた。

ある晴れた日に、今では妻になった彼女お得意のお弁当をもってピクニックに出掛けた。

2歳になった娘は大はしゃぎで、ピクニックシートを用意している間も走り回って、笑って危ないよと手を伸ばそうとした瞬間、雷が落ちたような衝撃を受けた。

妻に左右の三つ編みにしてもらった娘が駆け回るこの光景は、俺が子供の頃繰り返し見ていた、あの夢の光景だったのだ。

全てのことが、パズルのピースをはめ込むように辻褄が合っていく感覚がした。

彼女が俺を助ける夢を見たのは、俺が彼女と絶対に別れちゃいけないとあんなに感じたのは、この子のためだったのでは?と。

あの夢を見て感じた言葉で言い表せない幸福感、当時の俺にはわかるはずもない、あれは、幼い娘をもった父親の幸福感だ。

今初めて味わうはずの親としての幸せに、懐かしさを感じるという矛盾。
俺の人生は、こうなる運命だったのだと、今なら思う。

以上、ほんのり怖い、俺と妻の馴れ初め話終わり。
長文読んでくれた人、ありがとう。

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