友人になりすました悪いモノ

カテゴリー「心霊・幽霊」

昔、友人数人と山にキャンプ(バンガロー)に行った時。

山といっても、一応ちゃんとした施設で一日色々遊んで楽しかった。
それで漸く夜、さあ寝ようかという時間。
就寝の支度をしていると、友人(Yとします)が結構ガマンしてたみたいで、トイレ(大)に行って来ると言って出て行った。

みんな疲れていたようで、支度が終わると瞬間で寝ていた。
自分も寝そべりながらウトウトしていた。

その時、不意にバンガローのドアが強めの勢いでガタッと開いた。

さっきトイレに出掛けたYが、ドアから顔だけ出してこちらを覗いていた・・・んだが、どうも様子がおかしい。

服装や髪型はどう見てもYなんだが、目が不自然に垂れている。
人間の目を位置はそのままで角度だけ『ハの字』にしたみたいだった。

自分が「Y・・・?」と声を掛けた、それとほぼ同じタイミングで、そいつがこう言った。

「何で助けてくれへんかったんや」

Yの声だった。

「え?何が・・・」と思う間もなく、そいつはドアを閉めた。
タッタッタと走り去る音が聞こえた。

他の友人は誰も起きていないみたいで、俺は意味不明で怖くてしばらく眠れなかった。

しばらくするとまたドアが開いて人が入ってきた。
恐る恐る見ると、Y本人だった。

「いやー、漏れそうで危なかったよ」と笑いながら布団に包まっている。
意を決して顔を見たが、間違いなく俺の友人のYだった。

翌朝、Yにそれとなく昨夜トイレに行った時と帰りに誰かとすれ違ったりしなかったかと聞いてみたが、別に誰とも会わなかったとの事だった。

俺は特に誰かを見捨てたりした経験もないし、あの言葉の意味がまったく分からない。

目が異様に垂れ下がったあの顔は、今でもたまに夢に出てくる時がある。
誰かが間違えて入ってきたのか?そうだとして、あれは本当に人間だったのか?

Yはもちろん今も健在で、たまに会ったりしているが、この話は彼にはしていない。

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