友人の話。
このマンションでのオカルト騒動が始まってから、しばらく経った夜のこと。
帰宅してきた彼女は、ホールの掲示板に貼り紙がされてあるのに気が付いた。
『屋上への非常ドアが開いていたらすぐ管理人に連絡して下さい。絶対に屋上へは上らないようにして下さい』
確か屋上へのドアって、常に施錠されている筈だったけど。
そう思いながら部屋へ帰り、夕食の支度に掛かる。
やがて帰ってきた姉に、貼り紙の話題を振ってみた。
「うーん、まず閉まってるモンなんだけどね。聞いた話じゃ、最近、時折開いてるのが最上階の住民に見られてるらしいの。開いてるの見掛けたら、あんた上ってみる?」
まさかー。
怖くて近よれないよ。
「でしょ。でもね見た人の話じゃ、一瞬フラフラッと上りたくなるんだって。で二、三歩近よってから、我に返って逃げ出したんだってさ」
屋上から飛び下りた人って、いないよねー?
「うん、まだいないねー」
姉の微妙な返答に、言葉を詰まらせた友人だった。