同僚が寂しくて連れて行った

カテゴリー「心霊・幽霊」

先日、両親と酒を酌み交わした時に聞いた、警察での不思議な話です。

自分の家は父が現役の警察官、母も元警察事務で、出会いも警察学校という筋金入りの警察一家。

母は既に警察事務を退職して、小さな会社で事務作業員として働いていますが、未だに元同僚との飲み会は父と一緒に行きます。

いつも、警察24時を見るたびに二人は、画面を指さして、「おお、○○でぇ」と言っています。

その不思議な話は、母がまだ警察事務として働いていた2000年代前半のことです。

ある日、朝から剣道に勤しんでいた中堅警官のAさんが、心筋梗塞?か何かで突然倒れて、急ぎ病院に搬送されました。

医師からはもう半日も持たないと言われて、同僚たちは急いでAさんの家族(奥さんと一人息子)へと連絡したようです。

連絡はすぐについたものの、郊外にあるAさんの家から病院までは公共交通機関がなく、家には車もありません。

そこで、当時勤務していた自分の母がAさんの家を知っていたので、母ともう一人の同僚でAさんの家へと向かい、そこで二人を拾って病院に直行しました。

一刻を争う事態にも関わらず、病院に続く道は渋滞。
このままでは、病院まで1時間はかかってしまいます。

万事休すかと思われたその時、脇道から、赤色灯を光らせるパトカーが現れたのです。
それは無線でその情報を受け取った、Aさんの同僚達でした。

パトカーに先導してもらい、すいすいと渋滞をすり抜ける母とAさんの家族を乗せた車。
Aさんの奥さんは、涙ながらに感謝していたと言います。

職権汎用には間違いありませんが、それでも、結果としてAさんの家族は20分ほどで病院に辿り着きました。

結局、Aさんは亡くなってしまいましたが、家族はその最期を看取ることができたそうです。

同僚の最期に家族を付き添わせるため、パトカーで家族を先導した。
ここまでは警察内部の感動する話です。

不思議な話は、Aさんが亡くなる前にありました。

Aさんは亡くなる数年前、いつも、腕の立つBさんという後輩と練習をしていたそうです。
ところが、Bさんは勤務中に突然苦しみだし、亡くなってしまいました。
病院に運ばれる前には既に亡くなっていたようです。

Aさんは後輩の死に悲しんでいたようですが、それでも練習を積み重ねて、県内でも相当な腕前を持つようになりました。

そんなAさんがある日、父にこう話したようです。

「Bが最近夢の中に出てくる、とても人懐っこい笑顔で、あの頃のように話しかけてくる。それでな」

そしてAさんは、どこか懐かしむように、こう付け足したといいます。

「『Aさん、久しぶりに、一緒に剣道やりましょう』って言ってくるんだ」

それは、Aさんが亡くなる数日前とのことでした。

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