ガキの頃に体験したトラウマ話。
ある秋の夜。
季節外れの心霊特集の番組で、内容は覚えてないが、結構怖い話を見て、その怖さを誤魔化すためにさっさと寝た俺は夜中に何となく寝苦しくてぼんやりと目が覚めた。
まどろみから徐々に抜け出すと同時に、自分の身体が汗まみれなのと、同時に何か大きなものがのしかかってる感覚が・・・。
心霊体験で定番の状況にパニックに陥りながらも、思いきって目を開けた。
その頃、俺の家ではオレンジ灯だけつけて寝てたんだが、淡いオレンジの光の中、大人の男くらいのまっ黒な影が、俺の顔を覗き込んでいた。
あまりの怖さに悲鳴もあげられずにいた俺に、何とその黒い影が俺の顔に手を伸ばして来る。
「ヤバい!」という気持ちで頭の中が埋まった俺は、咄嗟にその手を払った。
よく聞く心霊体験なら、ここで金縛りにあって身体が動かないはず、とかそんなこと考える余裕は全くないが、影は払われても払われても手を伸ばし、ついに俺の手を掴んでしまった。
恐怖に涙まで流しそうになって必死に手をもぎ離そうとする俺。
しかし影はそれ以上何もしようとせず、次の瞬間「大丈夫、大丈夫だから」と聞きなれた親父の声が影から聞こえて来た。
どうやらうなされていたらしい俺。
様子を伺った時に丁度良く俺の目が覚めたらしいんだが、タイミングが悪いにも程がある。
おかげであれ以来オレンジ灯ってだけで何もないのに不安になるようになっちまった。