数年前イギリスに行った時の話。
前置きとして、この旅行がなければ今もまだ霊魂やらオカルトなど全く信じていなかっただろうなと思う。
三泊四日の俺を含めて友達四人で行く人生初めての海外旅行。
大学卒業を間近に控えた俺達だったんだが、それはもう大はしゃぎだった。
一日目と二日目は何事も無くメジャーな観光地を周り、初めての異国の雰囲気を大いに満喫した。
ちなみに、急遽決めた卒業旅行ってことで割りと予算も少なめでホテルもあまりいい所には泊まれなかったが、初めて触れるものばかりな俺達にとっては特に不満もなかった。
問題は三日目の夜に起きた。
その日も朝早くから観光名所を周り、クタクタになった俺達は三箇所目のホテルへと早々にチェックイン。
予約が遅かったのもあり、俺とAは四階、BとCは三階、と言った具合に部屋が離れてしまっていたんだが、深夜0時をまわる頃まで俺達の部屋で軽く飲んでからそれぞれの部屋で寝ることになった。
疲れていたので俺もAもすぐに眠りに落ちた。
ドンドンドン!!ドンドンドンドン!
どれくらい眠ったのかわからないが外から激しくドアを叩く音がする。
Aも目を覚まし、二人で顔を合わせる。
時間を見ると2時半を過ぎたあたりだ。
こんな時間に一体誰が何の用だろうか。
BやCか・・・?
未だに激しくドンドンと叩く音が聞こえるが、その音から尋常じゃない程の強さを感じた。
まさに非常事態かと思うほどにめいっぱい叩いている。
不審には思ったが、チェーンもついてるし大丈夫だろうとドアに近づき、解錠してノブを握った瞬間その音は止んだ。
恐る恐る開けてみるとベタではあるがそこには誰もいなかった。
「え・・・?」
そんな体験はじめてだった俺はうまく状況を飲み込めなかった。
近くに誰も居ないのを確認してチェーンを外して廊下に出ると、驚いたことに他の部屋の人々が皆廊下に出てきたのだ。
皆怪訝な顔で口々に何か言っているのだが、外国人の観光客らしく言葉は全然通じない。
だけどこの状況でさすがにわかった。
一斉に四階の扉が叩かれていたんだなって。
全然幽霊とか信じてなかったけど気味が悪くなった俺達は即座にフロントへ行き、こんなことがあったから部屋を変えてくれと頼んだ。
すると、フロントの女性は驚いた顔ひとつせず了承し、俺達に別の部屋をあてがってくれた。
新しい部屋に移動してしばらくは混乱して眠れなかった俺達だが、疲れには勝てず次第に眠りに落ちた。
翌朝、4人で合流してBとCに昨夜の話をした三階は何もなかったらしい。
後に聞いた話だが、そのホテルの正面には橋があるんだけどそこは戦時中、敵の兵士の首を橋のヘリに並べて晒していた場所だったと聞いた。
その話をしてくれたガイドさんに昨夜の話をしたところ、やはり驚きもせずに「そんなこと、外国では当たり前ですよ」と言われてしまった。
他にも後日談があって、帰国後「ちょっと話があるんだけど」と言われてAに呼ばれた。
暗い顔をしているAにどうしたのか聞くと、「旅行中にケータイで撮った写真見てたんだけどさ・・・コレ、誰?」、そう言いながら差し出されたケータイを見ると、そこには暗い部屋のベッドに女性が座っている画像が表示されていた。
そこにはその女性以外誰も写っていない。
しかも服装や身体ははっきりわかるのに顔だけが真っ黒でわからない写真だった。
Aいわく、とった覚えももちろんないのだという。
まあそんなに怖くなかったかもしれないけど、戦争が多かった国はやはりこういう類の事が多いそうだ。
皆も海外旅行は気をつけてな。