かれこれ何年になるだろうか・・・。
俺が学生時代の話だ。
ニュースで『43歳の女性が投身自殺』というのが出てた。
どうやらその女は踏み切りに飛び込んだらしい。
その踏み切りはちょうど学校へ向かう途中に通る踏み切りだった。
翌日、その踏切には警察官が数名現場検証のようなことをしていた。
警官のうち一人は、踏切のほうに目をやってるため、踏切が閉まった後に踏み切りを横切る人もいつもより少なかった。
俺は警官がごちゃごちゃ話してるのを歩みを緩めて盗み聞きした。
「まったく、電車が来ているのに踏切を渡ろうとするからだ」
「ああ、16歳だってのにな・・・被害者はあそこの高校の学生だろ?」
あそこの高校とは俺が通ってる学校だった。
それより俺は警官が昨日のニュースと違うことを言ってるのにびっくりした。
確か中年のばばぁが轢かれたんじゃ・・・2件あったのかな?
俺はその時は大して気にしてなかった。
学校に着くと、友人に早速そのことを話した。
そいつは「ばっかじゃねーの、電車に轢かれるなんてとろ過ぎ」と言った。
そいつは昨日のニュースは見てないようだ。
そして、その夜。
俺はオカ板で有名な『降霊機』を使って遊んでいた。
今日は両親共に居ない。
恐怖も高まったその時・・・電話がけたたましくなった。
一瞬ビクッとしてイスから転げ落ちそうになったが、何とか持ちこたえた。
ナンバーディスプレイを導入している自宅の電話は「非通知」と表示していた。
俺は恐る恐る電話に出た。
「はい、もしもし・・・」
しかし、受話器から聞こえてくるのは踏切の警告音だけだった。
それも音がだんだん大きくなっている。
「な・なんだ、イタズラなら切るぞ」
すると受話器から声が聞こえてきた。
「俺だよ、俺。オレオレ詐欺じゃないぞ」
「何だよ、お前か・・・」
それは昼間踏切の話をした友人だった。
「で、なんだよ」
「ああ、明日の宿題なんだが数1のプリントが・・・」
踏切の音でよく聞こえない。
「おい、それより踏切から離れろよ。音がうるさくて聞こえにくい」
すると奴は恐るべき事を言い出した。
「踏み切りだと?そんなものねーぜ」
「なっ、ちょ、じゃあ混線か?」
「しらねーよ、ん・・・なんだ、う・うああああああ」
「おい、どうした?」
一瞬、電車の汽笛のようなものが聞こえて通話が途切れた。
かけ直しても繋がらない。
俺は直感的に女が轢かれた踏切へ向かった。
踏み切りは警察が野次馬を押しのけたりして封鎖していた。
鉄道職員が線路をキョロキョロしている。
俺は半ば覚悟しつつ警官に聞いた。
「あの、すいません。人身事故ですか?」
「一般の方には言えません」
「多分彼の友人です」
「えっ」
警官は一瞬言葉に詰まった。
どうすればいいのか分からなかったらしい。
上司らしき人と掛け合って戻ってきた。
「あの・・・あそこの高校の方で?」
「はい」
警官は友人が事故で死んだことを教えてくれた。
死体の損傷が激しく、バラバラになって全ては拾えないそうだ。
翌日、俺はその踏み切りに差し掛かった。
否が応にも昨日のことが思い出される。
その踏切には警察官が数名現場検証のようなことをしていた。
警官のうち一人は、踏切のほうに目をやってるため、踏切が閉まった後踏み切りを横切る人もいつもより少なかった。
俺は警官がごちゃごちゃ話してるのを歩みを緩めて盗み聞きした。
「まったく、電車が来ているのに踏切を渡ろうとするからだ」
「ああ、16歳だってのにな・・・被害者はあそこの高校の学生だろ?」
どこかで聞いた事のある言葉だ・・・まさかな・・・。
これで俺の話は終わりだ。
後から考えるとなぜ友人が家とは逆方向の踏み切りにいたのか。
そして、なぜ俺に嘘をつかなければならなかったのか不思議である。