私ね、怖い話をするのが好きなんですよ。
何人かで集まると、決まって「実はね・・・こんなことがあったんだ」みたいな感じで怪談を始めるんです。
で、自称霊感ありってことにしてる。
聞いてる連中もそんなこと本気で信じちゃいないんだろうけど、何となくその方が盛り上がりますからね。
ある時私の所属してるゼミと、他のゼミと合同でバーベキューをやることになったんですね。
飲んで食べて散々騒いでるうちに、段々と日が暮れてきた。
そうなってくると私の出番だ。
まあいつものように「実はね・・・」って怖い話を始めたんですよ。
一人話し終えるとまた一人が話し始める、っていう具合に大いに盛り上がりました。
で、なんかの拍子でもって話がフッと途切れた時にこう言うんですよ。
「こういう話をしてるとさ、霊が集まってくるってよく言うでしょ?実はさ、今来てるんだよね。ほら、あそこに木が生えてるでしょ。今、その木の陰から男がじぃーっとこっち見てるよ」って。
そう言うとね、皆一様に嫌ーな顔するんですよ。
「ネタだろ?それ」って言ったり、中には本当に怖がってるのもいたりしますからね。
まあこっちはそんな反応を見るのが楽しいからそういうこと言う訳ですよ。
そんなこんなでもう時間も時間だし、そろそろお開きにしようかってことになったんです。
「お疲れー」なんて言いながら、銘々で帰路につこうとしてる時に、女の子が一人、こっちに向かって歩いてきたんですよ。
見たことない顔でしたからね、他のゼミの子なんでしょうね。
皆で話してた一番端っこでもって黙って話聞いてた子なんですが、その子が私の所に来てこう言うんですよ。
「あなた本当は霊感なんてないでしょ」って。
勿論その通りなんですけどね、ぶしつけにそんなこと言われたもんだから、こっちも多少ムッとなって、「どうしてそう思うの?」って聞いてみた。
したらその子が、「あなたはさっき、あの木の陰から男がこっちを見てるって言ってたけど、そんな男、どこにもいなかった」って言うんですよ。
そりゃそうですよ。
あれはその場を盛り上げるために、適当なこと言っただけなんですから。
でね、その子こう続けたんです。
「あなたの言っていた木にはそんな男はいなかったけど、その2本隣りの木から、女の人が逆さまになってぶら下がってたわ。その人、物凄く怖い顔であなたのこと睨んでた。『嘘つき、嘘つき』って言ってた。その人ね、あなたに付いて行くことにしたみたい。今、あなたの腰にしがみついてる。何するか分からないから、気をつけた方がいいよ」
それだけ言うと、その子、さっさと帰っちゃった。
私はっていうと、そんなこと言われたってどうすることも出来ませんよ。
何だアイツ、嫌なこと言うなぁって。
怖がらせたつもりが・・・相手の方が一枚上手だったんだ。
これは悔しかったですよ。
で、その話、信じた訳じゃないんですけど、どうにも気になったんですね。
だから次の日学校に行って、もう一度その子に会って話を聞こうと思ったんですよ。
ところがゼミの連中に聞いても「そんな子知らない」って言う。
「ええ?いたでしょ?髪はコレくらいの長さで、これこれこういう服を着てて」ってその子の特徴を説明したんですけど、やっぱり知らないって言うんですよ。
他のゼミ生にも色々と聞いてまわったんですが、結局見つかりませんでした。
今でも真相は謎のままですよ。