私は会社の独身寮に入っていた彼氏の部屋に上がりこんで昼寝していました。
3DKのマンションの一室で、私が寝ていたのは押入れのない和室でした。
風邪を引いていて、熱が少しあり、眠り過ぎでぼーっとした状態・・・。
眠くないのに、うとうとしていました。
目は瞑っていたのですが、ふと、足音というか、歩き回る足の気配に気付きました。
音の無い気配が柔らかい布団の上に・・・。
何かいる・・・と思った瞬間に体が動かなくなりました。
怖くて、怖くて、瞼は動きそうだったけど、開ける勇気は出ませんでした。
足音は、みしみしと、私の右肩あたりから、体の周りを時計と反対廻りに進んでまた戻ってくる、その繰り返し。
しばらくすると、気配は消え、恐る恐る目を開けると、何てことのない午後の日差しの入る、いつもどおりの部屋でした。
なんだったのかな?と思いながらも、仕事から彼氏が帰ってくるのを待ちました。
夜になり、帰宅した彼にその話をしようかと思ったのですが、怖がりな性格なので、迷って、結局言わず仕舞いでした。
熱のせいもあったのかな、と思ったのもあったのです。
後日、私たちは結婚が決まり、その寮を引き払うことになりました。
そのとき、ふと思い出して、「金縛りに遭い、歩き回る気配がして怖かった」、と何気なく言ってしまいました。
彼の顔が突然引きつったので、やっぱ怖がってる・・・と思ったんですが、彼の説明を聞いて、怖くなりました。
その部屋は、代々、会社の独身男性が入っていたのですが、彼が入社する数年前に、その部屋でひとり亡くなった男性がいたそうです。
寮といっても、マンションの一室だったのと、独身者がその当時はその男性一人きりだったため、発見されるまでに2日ほどかかったそうです。
時々、何かの気配を感じる経験はしていましたが、あの時ほどはっきりと感じたことはなかったし、人が死んだという事実がはっきりしたため、私にとっては今までで一番怖かった体験です。
東京都世田谷区に住んでた時のお話でした。