私はその声に眼を覚ました。
時刻は深夜2時。
額縁の裏あたりからそれは聞こえてくる・・・。
男のうめき声のようだった。
私:「隣のヤツか?こんな夜中に何なんだよ~うるせーな」
壁をたたいたが、まだ聞こえる。
廊下出て隣りのチャイムを鳴らした、何回も何回も。
しかし部屋からは何の反応もなかった。
ドアをノックした何回も何回も。
確かに聞こえているのだが出てくる気配はない。
それは男のうめき声であることは間違いない。
その時突然、後ろのドアが開いた。
怒りをあらわにした前の部屋の女性だった。
女性:「こんな夜中にうるさいったらありゃしない・・!あんたがうるさいの!?」
女性は私に向かって言った。
私:「いえ、僕じゃないですよ!!
」
女性:「そこの人は夜勤の警備員さんだから今はいないはずよ!」
私:「しかし、変な声が聞こえるんですよ。」
その時はもう声は聞こえてこなかった。
女性:「いいかげんにしてよまったく!」
バタン!とそのドアは怒りを込めて閉められた。
はたして本当にいないのだろうか?
部屋にもどり一服つけた。
私:「どうなってるんだ、まったく」
眠れなくなってしまった・・・。
このアパートに引っ越してきてまだ2週間、特に住人に面識はない。
私:「なんで俺のせいになるんだよ!!」
その時、あまりにも突然、部屋の電気が消えた!
そして今度は壁をたたく音が!!!
留守である部屋から確かに聞こえている・・・。
その時だった。
後ろに気配を感じた。
何かが動いている。
冷気が首筋を走り動けなくなった。
今まで金縛りの経験はない。
そして、はっきり見てしまった。
正面の鏡に浮かぶ男の姿。
部屋の中を動いている。
顔がないのに声が聞こえた。
声:「あいつに殺された・・あいつに」
そしてそれは近づいてきて、のしかかってきたところでそのまま気を失ってしまった。
何時間かして気がついたとき夜は明けようとしていたていた。
気を失うまでの事は全て覚えていた。
夢ではない。
憎しみのこもった声だった。
あいつに殺された、あいつに・・・。
確かにそう言ってた。
私は部屋を出て隣のドアを力をこめて引いた!
留守だと思ったその部屋に・・・首が浮かんでいた。
声:「俺のからだを返してくれ・・・」
私はわめきながら裸足で逃げ出して交番に飛び込んだ!
警備員の男の部屋から首が発見されたのはそれかすぐのことだった。