海を見ていました。
綺麗なエメラルドグリーン、心地良い水の音。
「心地良いなあ・・・いつまでもこうしていたい・・・」
すると、どこからか声が聞こえたような気がしました。
「いつまでも見てていいのよ・・・」
そして頭を優しく撫でられる様な感覚。
私は気持ち良くなってきて眠くなってきました。
「いつからこうしているんだっけ・・・?」
眠くなりそうな頭でぼんやり考えると、何故か急に不安感が広がりました。
「何かやることがあったんじゃなかったっけ?なんだっけ?」
「何かやらなきゃいけなかった気がする!やらないとマズい!」
不安は焦燥に変わった。
何かしなきゃいけないけど何なのか解らない!
どうしよう!?
そう思ったその時です。
「げほげほげほっ!」
ひとしきり咳込んだ私はまだぼんやりとする頭で周りを見回し、これまでの事を思い出そうとしました。
そうだ、ビールを飲み過ぎて眠くなったので風呂に入ろうとしたんだっけ・・・。
体も温まって出ようとしたら急に胸が苦しくなって目が回り始めて・・・。
湯船の中へ頭を突っ込む瞬間、必死に「意識を失っちゃだめだ!」と考えてた気がする。
さっきの夢の焦燥感はコレだったのか。
そこまで思い出したその時、背筋がゾクリとしました。
え・・・夢?
でも、さっきの頭を撫でられたような手の感触ははっきりと覚えているぞ?
いやまてよ、あの感触は撫でられてたのではなく、頭を押さえつけられていた?
淡いグリーンのユニットバスにて、一人暮らしの夏の夜の出来事でした。