酷いイジメで自殺

カテゴリー「心霊・幽霊」

今から三年程前、俺があるデパートにテナントとして入ってる焼肉屋でバイトしている時の話です。

当時、彼女と付き合い始めたばかりだったので、午後10時にバイトが終わるとまかないも食わず、そそくさと帰宅して彼女に会うと言うのが俺の日課。
そんな俺をからかっているのかバイト先の連中は「残ってれば良いことあるのに」だとか「まかないだけが此処の特典たじゃないか」なんて言っていたのですが、俺はもちろん冗談だと思っていたので特に気にも留めていませんでした。

しかし、連中の言葉には俺の思惑とは全く別の意味があったのです。
俺はすぐに、その言葉の意味を思い知らされる事になりました。

その夜は客がなかなか引かずバイトが終わるのは10時を大幅に過ぎてしまっていたのを覚えています。
俺は「こりゃ今日は彼女に会う元気残らんな」と感じて、その夜の約束を次の日にする旨を彼女にメールしていました。
そんな事もあり、珍しく俺はバイトが終わっても店に残る事に。
まかないのチャーハンをかきこみ、烏龍茶を飲みながら談笑している時、ふといつも言われている事を思い出し「なぁ、まかないの後の良いことって何よ。○ちゃん(バイト先の可愛い子)が何かやらしい事でもしてくれんの?」と意地悪く聞いてみました。

その瞬間、先程まで目の前で大声で笑っていたUが顔色を変え声のトーンを落としました。

U:「怒るなよ?」

俺:「なにがだよ」

意味も分からず怪訝な顔をしている俺にUは説明を始めました。

説明によるとUは店で一番古株の為、最後まで残り鍵を閉め、守衛さんにカード(デパートの中なので店ごとにIDカードのような物がある)を返してから帰ると。
そしてそれを一人でやるのが嫌でみんなを引き止めていると言う事でした。

俺:「???」

ますます不思議そうな顔をする俺にUは言いました。

U:「でな、なんで一人が嫌なのかって事だよ」

いつになく重い雰囲気で語るUに少し滑稽ささえ感じます。

U:「要するにさ、、、出るんだよ」

俺:「は?」

U:「いやだから。幽霊」

俺は完全に担がれたと思い吹き出してしまいました。

俺:「お前、さんざん引っ張って落ちそれかよwww」

馬鹿らしくなったので帰ろうとしたのですが、周りで話を聞いていた女の子二人ともう一人の男スタッフに止められてしまいました。

スタッフ:「いや、もう時間的に危ないから」

周りの余りの慌てっぷりに俺も不安になります。

その慌てぶりからとにかく何かあるのだと言うのは理解できました。
とは言うものの朝まで店にいる訳にもいかないので、俺たちは帰宅する事にしました。

時間はそろそろ午前1時になろうかと言う頃でした。
もちろんデパートの閉店時間はとっくに過ぎているので、外に出るには長く薄暗い従業員用の通路を通り階段を5階ほど降りなければなりません。

一言で『長い』と言っても、通路自体が店の裏側をグルッと回っているので、その長さはかなりの物で外に出るまでに大体10分程は歩かなければなりません。

どうも「出る」と言うのはその通路の何処かだと言う事らしいです。
しかし噂も聞いたことが無いし、もちろん見たこともない半信半疑の俺は、くっついて歩こうとする女の子に多少興奮したりと冷静ではありました。

一人女の子の肩を抱いて・・・にやけている俺にUは言いました。

U:「振り向くなよ。何があっても」

正直、「ありがちな脅し文句だな」と感じていました。
が、その瞬間は突如やってきました。

3分は歩いていたでしょうか。
従業員用のトイレを過ぎた辺りで「おい!」といきなり呼び止められたのです。
・・・聞いた事もない男の声・・・。
余りの急な事にパニくった俺はあろうことかさっき言われていたにも関わらず、振り向いてしまったのです。

トイレのちょうど前辺りにデパートの生鮮食品売場の制服を着て立っている男。
両目が鬱血して腫れ、飛び出しそうな程に目玉を見開いた恐ろしい形相でした。
手には縄跳び用の縄を持っているように見えました。

男はもう一度言います。

男:「おい・・・・・・・・・」

低く、くぐもるような声ですが、不思議と聞き取りにくいと言う事もなくはっきりと聞こえました。
恐怖で足がすくんでしまい「うぅ」と呻くのが精一杯の俺は隣を歩いていた女の子に引っ張ってもらいやっと外に出る事が出来ました。

外に出るまでの間、目をつぶっていたので様子は分かりませんが、二階の階段を降りる直前まで、男は耳元で囁く程の声で「おい・・・・・・」と言い続けていました。

後日聞いたのか、その場で聞いたのかは忘れましたが、そのデパートで昔酷いイジメがあり従業員トイレで自殺があったとか。

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