俺的には、というか俺だけが洒落怖だった話。
姉貴の友達に、霊が見える人がいて、ある日その人(以下、友子さんとする)をうちに連れてきた。
なんでも守護霊を見てもらうらしい。
たまたま俺も家にいて、姉貴は俺にも見てもらえとうるさいので、渋々従う。
友子さんは俺の方を見るなり一言、「あ、カッコいい」と言った。
曰く、背中に大きな刀を背負って鎧を着たお侍さんが、俺の後ろで腕を組んでたたずんでるそうだ。
しかもつけてる鎧が、戦国武将みたいなやつじゃなくて西洋の鎧っぽい感じで、全身をガッチリ覆ってはおらず、手足と上半身だけに付けてるらしい。
着物の上からそんな感じの防具を着て、陣羽織を羽織ってて、それがアニメやゲームのキャラっぽい印象で、それで第一声が「カッコいい」だったようだ。
友子さんは俺のそんな守護霊に興味を持ったらしく、その日以降も遊びに来ては俺を霊視したんだが、
その日、友子さんは一人でやって来た。
姉貴じゃなくて俺に用があるらしい。
凄く真面目な顔だったので、部屋に入れて、話を聞く事にした。
友子さん:「あのね、あなたの守護霊のお侍様なんだけど」
俺:「はい」
友子さん:「実はその人、守護霊じゃないの」
俺:「・・・・・・はい?」
友子さん:「何回か霊視して、お話も聞いてみたんだけど、お侍様はあなたの作った守護精霊らしいの」
そう言われた瞬間、背中がゾワッとした。
うちのじいちゃんはオカルト雑誌の愛読者で定期購読してて、バックナンバーも大事に保管してた。
俺が小6の時、その古い号に載ってたのが『守護精霊の作り方』という記事で、役割と名前、その他いろいろな設定を与えて、自分の願望を叶えるための精霊を自分で作るというもの。
細かいところまでイメージしやすいように、下手でもいいから実際に絵に描いた方がいいとあったので、当時の俺は守護精霊専用ノートを作って、そこに自分を守ってくれるサムライチックなヒーローを描いた。
記事には、定期的に呼び出す(正確には精霊を呼び出す場面をイメージする)必要がある、とか書いてあった(ような気がする)ので、毎日その設定ノート片手に、魔法使いみたいな感じでその自作のヒーローを呼び出すごっこ遊びをやっていた。
中学に上がる頃にはもうすっかり忘れてたんだけど、守護精霊の方はそれでもずっと俺の後ろにいたようだ。
友子さん:「でも、力が弱くなってて、このままだとあなたを守れなくなるから、何とかしてほしいんですって」
具体的には、また定期的に呼び出しのイメージをやるだけでいいそうだ。
友子さん:「このまま消えるには惜しいお方だから、絶対にやってね!絶対だよ!」
友子さんは真面目な顔で言った。
どうも俺の守護精霊が、友子さんの好みだったらしい。