昔、学生だった頃、友人5、6人で、夜中にバイクを乗り回して遊んでいた。
場所は、近所の霊園で、わりと広く、道路舗装されていて、中々いい感じのコースだった。
その日も、バイク3台で、6人が交代しながら、走っていると・・・。
一周目は、何事もなく、スタート地点である、霊園の駐車場へ3台は戻って来た。
二週目、俺と他二人が駐車場で待っていると、バイクが、なかなか戻って来ない・・・。
冗談を言いながら、他の二人と、少し待ってると・・・。
チリン・・・チリン・・・。
チリン・・・チリン・・・。
チリン・・・チリン・・・。
風鈴のような音が、聞こえて来た・・・。
3人は、喋るのを、一瞬止めた。
「今、何か聞こえなかったか・・・?」
一人が誰に聞くでもなく、そう言ったが、それきり、誰も返事もせず、沈黙がしばらく続いた・・・。
腕時計に、目をやると0時を少し回っている。
辺りは、静かで、時折、遠くで、バイクのエンジン音が、聞こえてるだけ。
しばらく待っていると、バイクのライトが見えて来た。
「おせぇよ!」
待っていたメンバーが、口々に言い、理由を聞くと、先頭がコケたらしい・・・。
怪我も、なかったので、3週目に突入。
俺は、3台の内、コケたバイクで、一番後ろを、走る事になった。
辺りはいつのまにか、霧が出て来ていたが、かまわずスタート。
が、いきなり、俺は、エンスト。
2台は、いつの間にか、見えなくなり・・・俺は、追い付こうと、スピードを上げる・・・。
しかし、前の2台は、全然視界に入らない。
今更だが、急に一人という状況が、恐くなり始めた・・・。
霧がドンドン濃くなり、視界が悪いせいもあり、俺はスピードを少し緩めた。
すると・・・チリン・・・チリン・・・チリンチリン・・・。(マジかよ・・・)
さっきの、風鈴みたいな音が、聞こえてくる。
ヘルメットしてるし、バイクのエンジン噴かしてるのに・・・!?
風鈴みたいな音は、だんだん近づいて来るような感じがした・・・。
チリン・・・チリン・・・チリンチリン・・・。
チリンチリンチリンチリンチリンチリンチリンチリンチリンチリンチリンチリン。
すぐ後ろから・・・。
もう・・・耳元で聞こえてる・・・!!
俺は振り向かなかった・・・。
いや、振り向く勇気がなかった。
とにかく、早く帰りたい。
夢中で走った。
気が付くと、風鈴の音は、聞こえなくなり、駐車場の側にある納骨堂の白い壁が見えた。
壁を右へ曲がり、駐車場へ着いた。
バイクを下りると、一人が「もう帰りたい」と、言いだした。
俺も正直、帰りたいと思ってたので、おひらきとなった。
ナゼかウチに着くまで皆、ほとんど喋らず、ウチに着いたとたん、一人が「○○(俺の名)お前の、納骨堂に写ってた影が骸骨みたいだった」と、真顔で言われた・・・「冗談だろ?」と、言ったが、皆、無言で俺を見ているだけだった。
それから・・・霊園へは行ってない。
ひと月して、コケたヤツが死んだ・・・。
後ろに彼女を乗せてのバイク事故で、彼女は怪我ですんだらしい。
葬式で、ふと、霊園での出来事を思い出し、いたメンバーに聞いてみると、どうやら、ヤツも霊園で、風鈴の音が聞こえ、振り向いた瞬間、コケたと言ってたらしい・・・。
また彼女の話だと、事故の直前、ヤツが振り向いたと言っていた。
俺はあれ以来バイクに乗っていない。
風鈴も好きじゃないし、音を聞くと身の毛がよだつ。