にょうらいさん

あれは俺が4、5歳の夏だった。
俺の実家は凄い田舎で蛇や野犬はよくいた。

俺はその日じいちゃんと祭に行ったんだ。
御輿が3つくらい集まって櫓のまわりを廻るみたいな小さい祭だったけど楽しかった。
祭りが終わってじいちゃんと二人で田んぼ沿いの道を帰ってるとき向かいから御輿がきた。

その御輿には先だって大きな白い犬が2匹並んで歩いていた。
俺は祭りがまだやるもんだと思って嬉しくなった。
隣を歩いていたじいちゃんに「じいちゃん!御輿だよ!」と言って駆け寄ろうとした。
するとじいちゃんは俺の腕をつかんで突然「いかん!」と怒鳴った。

普段俺には優しいじいちゃんは怒鳴るなんてこと俺には絶対しなかったから凄いびっくりした。
じいちゃんは「静かにして頭を下げてるんだ・・・」といって地面に土下座させるみたいにした。

御輿が通り過ぎる間じいちゃんと俺はずっと頭を下げてた。
でも俺、動物大好きでさ、最初に犬が御輿の前歩いてたから興味津々なんよ。
だからじいちゃんに頭押さえられてたけどつい見ちゃったんだ。

今考えるとあれは御輿ていうより牛車だと思う。
牛車を犬が引いてるみたいなかんじだった。
その牛車の周りには人間なんかいなかった。
動物だけだったんだよ。

その牛車の周りには色んな動物がいてその中に狐が2匹いたんだけど、そのうちの小さいほうが俺に寄ってきてじっと俺を見つめるんだ。

俺は恐くなってまた目線を下に戻した。
それから随分長い間頭を下げてたと思う。
やがてじいちゃんが「もういいぞ」といって俺は頭を上げた。
帰り道に「あの御輿はなに?」と聞いてもじいちゃんは答えてくれなかった。

家についてじいちゃんはばあちゃんに「にょうらいさんに出くわした」とだけ言っていた。
にょうらいさんがなんなのかはいまだにわからないがこれには後日談がある。

俺は祭の日を境に夢遊病になってしまったらしい。
夜寝てると突如、ケケケー!と叫んだり上半身だけ起こして笑いながら首を回したり、酷いときは4つん這いで布団の周りを走ったりしたそうだ。
それがにょうらいさんのせいなのかそれとも狐のせいなのかは分からない。

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