船室の中を白い人間が何人も

海の話です。
バルチック爺さんの話です。

日本海海戦は御存知の通り日本帝国連合艦隊の圧勝に終わったのですが、その人的被害は皆無ではありませんでした。
砲兵として働いた水兵たちは、敵弾による鉄片の飛散によって傷ついたものが多かったとか。
彼は多くの戦傷者を看護しながら日本の港に帰る途中で、海から変な音が流れてくるのを聞いたということでした。

それは甲高い「ヒュィーン」という音で、それを最初に聞いた時には「ロシア艦隊からの魚雷か?!」と緊張したようですが、そのような攻撃を加えることのできる敵水雷艇はその海域にはいない。
他の兵士も聞いたそうです。

それは海に広がる暗闇から聞こえてくる。
それが、すこしづつ低い音程に変わってきて「うぅおーん」となり、それが続いてまた音程が高まる、という。
低い音程の時は、まるで人の声のようにも聴こえたそうです。

それが高い音程になると、悲鳴のようにも聞こえてきた。
音は近づくこともなく、また遠ざかることもなく、夜明け前には消えたそうです。
それを聞いた兵士の中には念仏を唱えるものもいたそうです。

佐世保に入港したのち負傷兵を上陸させたとき、看護していた砲兵が「帰路航海中、船室の中を白い人間が何人も歩き回っていた」と述べたそうです。
重傷だったので幻影でも見たんだろうと思い、病院への引き継ぎ作業をしました。
その砲兵が、爺さんに長い計算尺をくれたそうです。

おそらく弾道計算に用いるものだったのでしょう。
生前見せてくれたことがあります。
その負傷兵のその後は聞いていません。

ただ、その後、戦艦三笠は停泊中に火薬の爆発によって港で沈没します。
司令官や爺さんたちは上陸していて難を逃れたそうですが、300名以上の殉職者をだしました。
爺さんは「何のために海戦で生きのびたのかわからない」と苦い顔をして話していました。

その後、連合艦隊は解散し、爺さんは船をおります。

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