ハイヒールで下山

カテゴリー「不思議体験」

趣味が登山な為、山にまつわる話。
ちなみに怖い話とはまた少し違う話かも知れないので箸休め程度に。
また経験のない方には少々退屈な話かもしれない。
なるべく分かりやすく書くので、一緒に登るような気持ちで読んでくれると助かります。

大学2年の8月に北アルプス、奥穂高を登りに同じ学科の友達2人を連れ計3人で向かった。
北アルプスの奥穂高岳は長野県に鎮座し、標高は3190m。確か日本に3000m超の山は9座しかなく(11座だっけ?)、その内の1つであり、槍ヶ岳と共に登山者の憧れの山である。
2泊3日の登山計画を練り、上高地からアタックした。

新宿を朝7時半に出発するバスに乗り、昼に松本に着く。
テキトーに昼を済ませ、電車、続いてバスを乗り継ぎ上高地に14時に到着。
宿のある徳沢までおよそ2時間、合羽橋からの景色や自然を楽しみながら歩く。

ちなみに登山と言うのは早出早着が基本であり、朝まだ暗い内に出発することはあっても夜遅くまで登ることはまずあり得ない。
なのでこの日は徳沢で一泊することに。
徳沢にある徳沢園は料理も美味しくお風呂にも入れる為、登山者には嬉しい。

翌日はまだ日の出ていない4:30に出発し、横尾、本谷橋を経て涸沢に着くころには9時を回っていた(本谷橋で朝日を浴びながら岩の上で寝転ぶ休憩は格別だった)。
少し休憩を取ってここからが本番である。

涸沢小屋の横から登りが急になりゴツゴツした石をどこまでも登っていく。
景色にだいぶ救われるものの、はっきり言って疲れが一気に押し寄せる時間帯・・・8月になっても溶けない雪を横目にひたすら登る。
ある程度登ると今回の難所、ザイテングラートに着く。
ザイテングラートとは鎖場が続く急登で、大きな岩を登っていく。

途中途中で後ろを振り返ると登ってきた道、小さくなる涸沢小屋、そして雄大な山容に感動する・・・が、気を抜くと足を滑らせ大変なことに。
事実、俺等の前に歩いていたグループの1人が救護ヘリにつり上げられ運ばれていった。
現場には血痕も・・・。

気を引き締め一歩ずつ進んでいくと、ようやく本日の宿、穂高岳山荘に到着!
途中すれ違う下山者にあとどのくらいで山荘に着くか尋ね、あと20分くらいだから頑張れ!と励まされるも山荘に着いたのは1時間半後だった。

この山荘の前で驚くべき光景を目にした。
山荘から頂上までまだ少しあるのだが、俺等が山荘に着くと同時に頂上から降りてきた人を見かけた。
しかし、その格好は驚きの一言である。

なんとピンクのカーディガン、スカートにハイヒール、手にはハンドバッグのみ・・・。
THE!昼休みのOLなのだ。

これがいかに信じられないことか・・・ちょっとコンビニでお茶買ってくる~ノリで3190m登ってきたなんて、もはや狂気の沙汰である。
サザンの桑田はハワイ旅行に手ぶらで行った伝説を持つが、こっちもなかなか負けてない。
そのOLは山荘を通りすぎ俺たちが登ってきた道をそのまま下山していった・・・。
ハイヒールをコツコツと鳴らして。

山荘に着いたのは14時・・・今からハイヒールで下山して大丈夫なんだろうか・・・てか、ハイヒールでザイテングラート降りるって可能なのか・・・。

もはやどっから突っ込めば良いか分からなかったが、俺たちの中であのOLは忍者なんだと結論付け、伊賀か甲賀か聞き忘れたことに激しく後悔した。

ちなみに翌日はあいにくの嵐。
雨の中、上高地まで一気に降りたのだが雷が鳴り響き全身びしょ濡れ。
件のOLは無事下山出来たのであろうか。
その日、特別、遭難者が出た、怪我人が出たなどのニュースは無かった。

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