血がつながっていない遠縁に、やたらトーシツが多い一族がいる。
多分遺伝だろうと思うんだけど、だいたいパターンは同じで、学生時代は県で1、2番を争うほどの神童(医者や大学助教授になった人もいる)。
30歳前後から少しずつ様子がおかしくなるんだ。
その中に一人、現在60代後半のオジサンがいる。
このオジサンは日常生活も困難なほど言動がおかしいのに、投機だけは予知能力があるのかと思うほどズバズバ当てるんだ。
40歳ぐらいで病気が酷くなったので勤め(某研究職)を辞め、あとはずーっと株や先物買いで食ってるんだが、その当たり方が半端じゃなくて、今ではいくつもビルやアパートを持ち、資産は数十億円に膨らんでいるらしい。
でも、投機以外のことは何もできないから、賃貸経営や資産運用などは彼の奥さんと息子がやっている。
2、3度葬式で会ったことがあるけど、誰とも話さず目を合わさず、ボーッとして醤油をつけずに刺身を食べる無気味なオジサンだった。
オジサンがトーシツを発症して間もない頃、家族が彼を拝み屋に見せたら「クダギツネが憑いている」と言われたそうだ。
これは狐憑きの一種なんだけど、これが憑くと異常に投機が強くなって、一日中あれを買えー、これを売れーと指図する声が聞こえる。
しまいにはその声に支配され、声の命令通りにしか動けなくなってしまうのだという。
オジサンはまさにそうなりかけていたんだけど、本人は頑としてお祓いを拒否。
ちょっと凄いのは、オジサンの両親と奥さんも「そういう狐なら無理に取らなくても」と、お祓いをせずオジサンをそのままにして稼がせることにしたのだそうだ。