親戚のお爺さんの話。
大戦中、徴兵されて、東南アジアのジャングルで戦っていたのだという。
撤退戦の最中、運悪く足を銃で撃ち抜かれた。
焼き付くような痛みに「やられた!」と思ったが、手を伸ばしてみると何処にも怪我をしていない。
鋭く感じた痛みも、幻のようになくなっていた。
不思議に思いはしたが、四肢の動きに支障はなく、無事に帰国することが出来たのだそうだ。
終戦後、実家で農作業をしていると、いきなり足が激痛に襲われ、血を吹き出した。
病院に担ぎ込まれたところ、どうにも銃創に見えると言って、医者が首を傾げた。
親戚のお爺さん:「それにしてもおかしな話だ。村中の銃や鉄といった物はすべて供出させられてどこにも無いというのに。一体、どこの銃で撃たれたんだ?」
お爺さんはその時の銃創だという古傷を見せてくれながら、この話をしてくれた。
親戚のお爺さん「理由はわからないが、あン時撃たれたものだって、儂にはわかったんだよ。えらく間が開いたモンだが、そのお陰で生きて還ることが出来た訳だ。コレが無けりゃぁ、お前たちも産まれてきてなかったんだぞ」
話の最後に「生きているっていうのは良いモンだなぁ」と付け加え、カラカラと笑っていた。
そのお爺さん、少し前に鬼籍に入った。
私の子供を抱かせてあげられなかったことが、本当に残念だ。