粘液質の音

カテゴリー「不思議体験」

俺が子供の頃、近所に湖があって、そのすぐ脇にはバラックがあったんだ。
そこには乞食(こじき)っぽいおっさんが住んでてね、カフェテリアによくあるような椅子の小汚い奴に座ってよく池の方をぼーっと眺めていたんだ。

夏休みのある日、HとKを連れて俺たち3人はその湖でウシガエルとか魚を捕まえていたわけよ。
Hが持ってきた空気入れで膨らますゴムボートに乗っていたんだが、いつの間にか辺りが暗くなっていてそろそろ引き上げるか、という事になった。

ボートと同じく空気で膨らませた櫂で漕ぎ、岸に向かったんだが・・・
おっさんが相変らずいる。

親たちもあまりこの人のことを快く思っていなかったため、俺たちはいつものように無視してボートを引き上げていたんだ。
空気を抜こうとしたとき、くちゃくちゃと不快な音がおっさんのほうからする。
気持ち悪いが、気にしたところでしょうがない。

早々に空気を抜いて立ち去ろうとしたんだが、Kが向こうのほうに居るおっさんのほうを見て固まっている。
ここから一刻も早く離れたかった俺は、おいさっさと帰るぞとKに言ったら、Kがへたり込んでしまった。

ゴムボートを入れていた袋が飛んで拾いにおっさんのほうに行ったら、おっさん片方白目剥いてたって。
んなことあるかって、Hと一緒に確かめに行ったらおっさん、座ったまま死んでた。。。

親に言ってすぐ警察が来て何時間も話してもらえなかった。
どうやら、おっさんは2日前にはすでに死んでいたらしい。
死体の前で俺たちずっとはしゃいでいたんだ。
だが、恐怖はもっと別のところにあったんだよ・・・

あのバラックの中。
おっさん人殺しだったらしい。
後に親父たちが話をしているのを聞いたんだが、30代くらいの女性の遺体が布団から見つかったって。
その人、近所の中学校の教師で、昨年失踪した美術の先生だったらしい・・・.

それにしてもさ、あのときおっさんのほうから聞こえたくちゃくちゃって音、一体なんだったんだろう。

あの粘液質の音が今でも忘れられない。

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