坊さんの般若心経

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

部活で夏合宿の企画が挙がり、その際に肝試しをしようという話になった。

合宿と言っても高校の敷地内にある宿泊施設で、お泊まりをするだけ。
肝試しと言ってもこれまた敷地内を回ってお札を取ってくるだけというお粗末なものだった。
むしろ男女ペアで肝試しをするという事に意味があったのだろう。

そして当日、くじ引きで私は同級生の子と1番手で出発する事に。
その頃既に怪談フリークであった私は、道中怪談などで盛り上あがりつつ、暗い校舎の庭を抜け、チェックポイントに設定した校舎の離れに着く。

普段から使う建物ではあるのだが、校舎に比べて古く、外観も古い洋館といった趣なので暗いとそれなりの佇まいである。

ここで私は自分のミスに気付いた。
私はコース設定の係だったので、皆に内緒でテープを聞こえるか聞こえないか程度の音量で流す事にしていた。
それが、それとなく聞こえるようにしたつもりだが、音が小さ過ぎて全く聞こえない。

音量を1ツマミ大きくすると聞こえすぎてしまうので、仕方なく同行した女の子にテープのネタばらししつつ、失敗したーと二人で笑いながら宿舎に戻った。

後輩の悪戯でお札が足りなくなったり、同級生が携帯を落としたりと、ハプニングもあったが肝試しは無事終了、概ね好評だったようだ。

その後、皆で花火をしている際に、後輩のペアが「めっちゃ怖かったです」「お札取ろうとしたら女の人の声がして、『ちがうの・・・ちがうの・・・』って」「怖くて走ってきちゃいました」といった話をしていた。

余程怖かったのか、蒼白な顔をしていた。

私とペアだった女の子が、「それは私君の仕込んだテープだよー」という話をして私が咄嗟に「そうそう」と相づちを打つと、後輩も安心したようだった。

私が仕込んだテープ、坊さんの般若心経だという事は内緒にしておいた。

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