これは私の身に起きた出来事。
数年前、片田舎で小さなショットバーを開店した。
廃墟のような10坪もないような小さな物件。
しかし信じられないような破格、そして全面リフォーム可、というふれこみに当事自分の城を持つという夢を持っていた自分はすぐさま飛びついた。
小資本での店作りだったため、友人達と一ヶ月に渡りコツコツ物件をリフォームを重ねた。
壁紙を張り替え、厨房を作り、カウンターだけの小さなバーが出来上がった。
そしてオープンの前日レセプションを開き、お世話になった友人達と真新しい自分達の手で作り上げた店で、一晩中苦労話なんかして楽しく飲み明かした。
レセプションも終わりに近づき、本当に親しい友人だけで片付けをしていたら椅子の下からお守りが出てきた。
交通安全の。
最後の残った友人は店の工事関係者。
レセプション寸前までそうじなどを手伝った面々。
開店前にそのお守りを見たものはいない。
気味が悪くなって参加者全員(レセプションなので招待客はすべて連絡が取れる)にお守りを落とした人はいないかを確認したが該当者はなし。
前日や当日に来ていた業者も確認を取るが該当者なし。
結局捨てるわけにもいかず、かといって供養するにも知識がなく、ただ敬意を込めて店の一番人気の酒瓶に、持ち主が現れるまでかけておくことになった。
そんなことはお構いなしに店はオープンし、にぎわいはじめ、お守りのことはただの飾りになりつつあった頃から友人達に、そして店に異変がおき始めた。
閉店時間を過ぎると必ずといっていいほどラップ音が聞こえた。
それは私一人が聞いたのではなく、閉店後に残るスタッフや友人達も同時刻に聞くのだ。
決まって二階から降りてくる足音(二階は物置なので誰もいない)→床を歩く音→厨房の扉が開く音→冷蔵庫の扉を開ける音の一連の動き。
そしてそれと同時期に友人達が次々と車関係の事故に遭遇した。
皆軽症だが確実な事故連鎖だった。
実に2ヶ月で10件ほどの事故が工事関係者におきた。
そしてそれを締めくくるかのように私も四駆を全損するほどの事故に巻き込まれた。
そのお守りは今もカウンターの一番人気の酒瓶にかかっている。