アメリカで材木業者に聞いた話。
森林で行方不明になった樵の捜索をしている時、奇妙な物を見つけたという。
薄暗い木立の中で、白い塊がぼんやりと中空に浮かんでいたのだ。
近づいてみると、それは木の間に張り渡された白い繭で、人が一人、充分に入るくらい大きかったという。
山の仕事について長いが、そんな代物を見るのは初めてだった。
興味を覚えた彼は、持っていた山刀で、繭に切れ目を入れて中を覗いてみた。
中から異臭があふれてき、黒ずんだ動物の身体が目に入る。
ミイラ状になって干からびた鹿が一頭、繭の中に押し込められていた。
目は虚ろに見開かれ、腹は何か入っているかのように膨れていたという。
ふと思い至った。
鹿を捕まえてこんな繭を作れる生物って、一体どんなやつだ?
急に心細くなり、その場から逃げ出したそうだ。
行方不明の樵は無事見つかったが、その繭にはそれ以降お目にかかれていないという。