山でくねくねに似たモノを見たという話は私も聞いた事がありますよ。
ただ、随分前に聞いた話なので記憶が曖昧になっているので、もう一度話を聞いてから書き込もうかと思います。
山の怪異というのは、確かに奇妙で不思議な話が多いですね。
その一方で、当事者が何らかの不利益を被るケースでは、何がしかの『ことわり』の存在が感じられるような気がします。
私としては、『山には山の理があって人はその一部しか知覚出来ない』という風に解釈しているのですが・・・。
何はともあれ、自分もそんな山の怪異譚に魅了された一人なんです。
さて、次の話はまだどこにも書き込んでいない話です。
台風による強風が吹き荒れた翌朝のこと。
一人の男が、自身の所有する山林の様子を見るために山の奥へと車を走らせた。
が、目的地まであと少しというところで林道は寸断されていた。
山崩れによる土砂の上に、強風で倒れた木々が幾重にも重なりあっている。
簡単には復旧できそうにない有り様に、男は諦めて引き返そうとした。
ところが、寸断された地点の少し手前に、奥へと向かう見知らぬ山道がある。
人が一人やっと通れるくらいの細い道だったが、どうやら迂回できるようだ。
男は、その道を通ってようやく自分の山へと辿り着くことができた。
山は酷い有り様だった。
倒木が至る所に転がっており、かろうじて立っている木も殆どが途中で曲がっている。
男は、翌週から山を復旧すべく作業を始めた。
倒木は寸断して積み上げ、曲がった木は引っ張って元通りにする。
周囲の山林も似たような状況なのに、誰も復旧作業にあらわれない。
無惨な姿のまま放ったらかしにされている山を見る度に、男は心を傷めた。
そんなある日、台風被害に対する補助金の説明会が催され、多くの森林所有者が集まった。
その席で、男は隣接する森林の所有者を捕まえて問い質した。
男:「なぜ、倒れた木々を放っておくのか?あのままでは山は荒れ果てる一方だぞ」
所有者:「何だと?俺はちゃんとやっているさ。お前の方こそ何時まで放っておくつもりだ?」
誰に聞いてもこんな調子で話が噛み合ない。
それなら一緒に行ってみよう、と何人かで連れ立って山へと向かった。
ところが、いつも通っていたはずの山道が見つからない。
「おかしいな」
「ここにあった筈だが・・・」
「痕跡すらないとはどうした事だ」
どうやら、各々があの山道を通って作業に通っていたらしい。
仕方なく、山の中を切り開いて奥へと向かった。
着いてみると、一帯の山林はどこも綺麗に復旧されている。
しかし、彼等は誰一人お互いが作業しているところを見ていなかったし、昨日までは自分の山以外は荒れ放題だった、と主張して譲らなかった。