ちょっと前の話。
高校生だった俺は、ボロい学生寮に住んでた。
先に断っておくが、自殺とか殺人があったって話もなければ、建っている場所も昔は畑があっただけっていうオカルト要素ゼロな所だった。
その日は、深夜までベッドに座り、壁にもたれかかって漫画か何かを読んでいたと思う。
深夜二時くらいになったところで、急に、もたれかかってた壁のちょうど頭のとこらへんを、向こうからガリガリ引っ掻くような音がした。
その寮の壁は薄くて、結構音漏れとかもあったが、その音の響き方は尋常ではなかった。
それこそ壁紙を裏から引っ掻いているような感じだった。
さすがに気味が悪かったので、隣の部屋の奴に文句でも言いに行こうと思った。
それでベッドから立って、そのガリガリしている所を振り返った瞬間だったように思う。引っ掻く音が止んで、頭のあったとこの壁から何かとがった物が飛び出してきた。
物凄くサビびたハサミだった。
鉄サビで真っ赤になったハサミがこっちに刃を向けて壁に刺さっていた。
その時、物凄く低い声で「運のいいやつめ・・・」って聞こえた。
人間、ビビりすぎると逆に冷静になって、どうでもいいことを考えるようで、そのときの俺は、なんとなくジョジョ5部に出てきたスタンド「メタリカ」を思い出していた。
で、隣の部屋に転がり込んで、てめえ何しやがる的な文句を言ったら、そんなのは知らんと言われた。
確かに俺の部屋に面している壁を見ても、ハサミは刺さってなかったし、引っ掻いたような傷すらなかった。
自分の部屋に戻ると、ちゃんとハサミは壁に刺さっている。
どう考えても壁の中から突き刺したみたいだった。
一応、ハサミは壁から引っこ抜いて、近所の寺に持っていって、俺も軽くお祓いしてもらった。
霊感とか全くなくて、幽霊なんて見たことなかったが、幽霊ってこんな風に物理攻撃してくるものなんだろうか。
あれは何だったのか、いまだに分からない。