妙な死に方だった

カテゴリー「不思議体験」

家の近所に酒屋があった。
立ち飲みも兼ねたおっさんの溜り場で、小さい頃はよく遊びに行ってた。

酔っ払いのおっさん達は野良猫にエサをやるわ、遊びに来る自分達にもエサをやるわで、夕方5時頃はちょくちょくお祭り騒ぎだった。
そこの店主は兼業してるとかで、当時40くらいの奥さんが店番してたんだな。
そのおばちゃんはよその子でも平気で叱るいいおばちゃんだが、子供心にあまり好きじゃなかった。
たぶん酔っ払いの下品なおっさんから子供を遠ざける意味もあったんだと、今では思う。

その酒屋には自分よりだいぶ年上のお姉さんがいて、結婚を機に酒屋のすぐ横に家を建てることになった。
家が建ってまもなくすぐ子供が生まれ、酒屋のおばちゃんはお婆ちゃんになった。

自分が社会人になったばかりの頃、孫の男の子が4、5歳だったと思うが、酒屋のおばちゃんが亡くなったんだ。
自分も葬式に行ったし、孫の子は大泣きしてた。
常連のおっさんも涙ぐむし、葬式する僧侶まで熱の入った葬儀をあげていた。

葬式からしばらく経った頃、酒屋の隣に立つ家の庭で孫の子が遊んでるのを見つけた。
声をかけると、庭をいじってたのか小さいシャベルを持ってて、後ろ手に隠しながら恥ずかしそうに挨拶してきた。
ほんとに絵に書いたように上目遣いで恥ずかしそうにするのが印象的で、母親いわく「ガーデニングが趣味」という渋い子だったwww

仕事先でよくお菓子をもらうんだが、その子を見かけるとあげるのが習慣になっていた。

ある日いつものようにその子を見かけて、声をかけるとその子は「お供えするね」と言って、庭の隅にある小さい箱の前にお菓子を置いた。
しゃがんで一礼するポーズまでする。

「あれなあに?」と聞くと「神様なの」という。

詳しく聞こうとすると、恥ずかそうにしながらも教えてくれた。
神様が入っている箱で、お婆ちゃんもこの中にいる。
お供えをして拝むと、庭の花がよく咲く。
こんな感じだったと思う。

小学校に上がる前に「信仰心があるとはすごい子だな」と思ったが、その箱とやらがちょっと変わってる。

遠目には箱状のもので、作りは犬小屋のよう。
大きさは30センチくらいの立方体。
色合いは木なんだが、陶器でできているようで、子供の手作りには見えない。
そもそもすごく古い既製品にしては用途が不明だし、言われると確かに神社をミニチュアにしたようなモノだった。
中を覗き込んでも、何か入っているわけではない。
触ろうとするとその子がひどく嫌がった。

その時はそれでバイバイしたんだが、数日後にその家の庭を見た時に箱の場所が入れ替わっていた。
庭というより、家のトイレか風呂場にあたる窓の真下、人目をはばかるような位置に置いてある。
神様はお引越しかな?と少し近づいて覗き込んだら中に猫の死体が入ってた・・・。
死後2、3日くらい?
全体の毛が血だらけで猫かどうかも怪しい代物だけど、動物の死体であることは確かだった。
この近所は野良猫が多く、酔っ払いがエサをやることでよく溜り場になっていたが、酒屋のおばちゃんが亡くなり、常連も高齢化して足が遠のいたことで数が減っていた。
昔来いた猫の模様とよく似ていたので、それの子孫だと何となく思った。
この辺で車にでもひかれて、あの子の親が中にいれて片付けちゃったのかな、くらいにしか思わなかった。

それからちょっと経った頃、また庭にあの箱を見つけた。
やっぱり庭の隅っこに置いてあり、今度も何となく目立たない場所にあるな、と思って中を覗き込んだ。
またもや猫の死体が入ってて、今度もこの間と同じような状況・・・。

パっと見は綺麗に死んでるんだが、首らへんから大量に出血してそれが体中の毛に染み込んでる。
刃物で切られたり、車にひかれたにしては妙な死に方だった。
そんな光景を全部で4回見て、何となく気持ち悪いのでその子にお菓子はあげなくなった。
見かければ声をかけるし、向こうもいつもの上目遣いで挨拶してくる普段どおりに戻った。

それからその子が小学校にあがることになり、酒屋の店主、おじいちゃんが庭でバーベキューをすることになった。
自分は小さい頃から遊びに行ってたし、男の子とも顔見知りだから一緒にどうか?と誘われた。
暗い庭で大人が火の回りで肉を焼いてる中、男の子は庭の隅であの箱の前でなにやらごそごそしてる。
気味が悪くなってその子の母親に「あれ何ですか?」と聞いてみた。
いわく、あの子がどこからか見つけてきた、絶対に触らせてくれない、勝手に触るとしばらく不機嫌になる。
その程度のことしか知らないらしい。

事実、庭にはあの子が植えたであろう植物がちらほらあるだけで、完全にあの子専用の遊び場になっている。
「昔この辺は野良猫が多かったよね?」、ってそれとなく話を振ったら「今はおじいちゃんが店番してるからあんまり寄り付かなくなったね」と返ってきて死体の事は何も知らないみたいだった。

ある程度お肉をご馳走になったあと、店主のおじちゃんに「おばちゃんに線香をあげても構わないか」と頼んだ。
おじちゃんは嬉しそうに酒屋の奥、古いほうの家に案内してくれて仏間に通してくれた。
線香をあげてお念仏したあと、おじちゃんが少しずつ話し出した。

はじめは自分の妻に苦労をかけたこと、孫の自慢話で毎日のようにあの子がお線香をあげにくること。
話を聞いてておかしいな、と思った。
おばあちゃんはあの箱にいるんじゃないのか?とwww

何も知らないんだろうなぁと、半分ダメ元であの箱の話を振ったとたん、おじちゃんの顔が曇った。

おじちゃん:「あれは昔、うちの酒屋の横にあり、酒蔵の中にあったものだ。娘が家を建てるので跡地を片付ける時、あの子が持っていった。たぶん神棚のような使われ方をしていたが、中身については知らない」

そう教えてくれた。

おいおい、ほんとに神様がいるのかよ、と寒気がしてそれ以上は追求しなかった。
たぶんおじちゃんも可愛い孫が遊び道具にしてるものを無下に取り上げられないんだな、と推測したから。

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