夕方山に登っていると、木の杖ついたおじさんというかお爺さんとすれ違ったの。
今の時代、蓑(みの)なんて着ないでしょ?
しかも、半ズボンというよりもほぼパンツのようないでたちで、素足を出しまくり。
そして草鞋を履いてた。
で、その爺さんとすれ違うときに、「こんにちは」と声掛けしたんだけど、こっち見てニヤニヤ笑ってるだけで歩き去って行った。
まゆ毛が「ハの字」で垂れ目。
ちょっと池沼ぽかった。
歩き方もヨタヨタしていて、とてもここまで登ってきたとは思えない・・・。
そこからが不思議。
俺達は全員で四人だった。
俺と友人が先に登って、あとの二人は数百メートル後を追いかけてたわけ。
なぜかというと、あとの二人は撮影で来ていて、写真を撮りながらゆっくり登ってたから、上で落ち合うことになっていた。
あとから来た二人に聞くと、そんな爺さん見てないって言う・・・。
でも、そこは確実に一本道だった・・・。
もうひとつ不思議なことに、後から来た二人は、爺さんじゃなく、赤ん坊を抱いた婆さんとすれ違ったと言ってる。
俺達はそんな婆さん見てない・・・。
その婆さんも、今の時代にそぐわず昔の農家のような汚い着物を着て、浅黒い顔をしていたらしい。
俺を含めた三人は、「こえぇ~。確実にジジババの幽霊だ」と言ったんだけど、俺と一緒に登ってきた友人だけは一番青い顔をしてビビっていたくせに、「絶対に心霊現象や幽霊じゃない。」と言い張ってた。
一人が言い張るから、俺達はその話はせずにその晩は寝ついたんだけど、夜中に心霊現象じゃないと言い張ってた友人が発熱。
そして「体が重い。あの爺さんが石になって俺にしがみついてるんだ・・・」とか言い出した。
俺が、「大丈夫か?おまえ、あの爺さん幽霊じゃないって言ってたじゃねえか。」と耳元で言うと、「うん。たしかに幽霊じゃないけど、人間でもないんだ。」とかおかしなことを言って口をつぐんじゃった。
ここでまたもや不思議なことに、翌朝には友人は嘘のように具合が良くなり、食欲も普通に戻っていた。