友人の話。
彼は幼い頃、よく神社の境内で遊んでいた。
そこには奇妙なお爺さんがいたのだと彼は言う。
その老爺は、子供たちが遊んでいると、いつの間にか舞台の上に現れていた。
作務衣のような服を着て杖を持ち、終始ニコニコとしていたそうだ。
奇妙なのはその頭だった。
ズルっと引っ張ったかのように、眉毛の上辺りから延々と禿頭が伸びていたのだ。
所々皺のある白い頭部は、途中で地の上に垂れ下がり、社裏の山中へ消えていた。
まるで白い蛇の頭部に老爺が生えているような、何とも不思議な姿だった。
普通の存在でないことは子供心にもわかったので、声をかけたことはないという。
「老人の姿が見えていたのは自分だけだ」と思い込んでいた彼は、大きくなってからそれが間違いであったことを知る。
成人式で再会した幼馴染みが「今だから言うんだけど」と前置きして、件の頭が長い老人の話をしたのだ。
幼馴染みも彼同様、他の子供にはその姿が見えていないと信じていたらしい。
現在、二人は仲の良い夫婦になっている。