壊死寸前だった

カテゴリー「不思議体験」

霊感の無さに定評のある俺が東京で体験したありえない話。

空手の試合の帰り、ボロ負けして痛みを我慢しながらチャリこいでた。
試合会場が微妙な距離で、携帯でマップを見ながら帰ってたんだが、大通り沿いから住宅街に入る道が若干近道になると気付いてそっちに行くことにした。

最初はなんの変哲もないただの住宅街だったんだけど、途中から舗装されていない道になり、いつの間にか道の両脇に木が生い茂る怪しげな道を走っていた。
もう日も落ちてて早く帰りたかったし、携帯のマップも正確な道を示してたから『うわーやめたらよかった』と思いながらも進んだ。

左ひざを痛めてたんだが、走ってるうちに痛みが酷くなってきたから一旦止まってもんでみた。
が、なんか濡れてる。
携帯のライトで確認したらびびった。

血がズボンを濡らしていた。

怪我といっても打撲のはずなんだが・・・。
生い茂った木で切ったかも?と思ったんだが、長ズボンだし何かが当たった感触も無かった。

そこで初めて違和感に気がついた。
その道は街灯も無く、ほとんどまっすぐの道はチャリのライトなしでは暗すぎる。
携帯でマップを確認したが、普通に住宅街を走っていることになってる。
でもマップって建物の形もわかるようになってるじゃん。
道沿いにはほとんど絶え間なく建物があるはず。
でも改めて見渡せばほとんど森といってもいいくらいの密集した木々。

急に鳥肌が立った。

すぐさま引き返したんだけど、曲がった覚えのない道をいくら走っても元の道にはもどらない。
足も痛いし、汗だくになって必氏にチャリをこいだんだが、とにかく大通りに出ない。

携帯のマップではもうとっくに大通りを過ぎて学校かなんかの校庭を爆走していることになっていた。
テンパりまくって泣きそうになりながら進むと急に開けた道に出た。

化け物のようにデカイ木が目の前にあった。
もう完全に東京じゃない。
天下の新宿まで電車で30分弱だぞ?もう視界がクラクラした。

ズキズキする足を照らして見ると相変わらず血が出続けてる。
頭も痛くなってきて汗が噴き出す。
鳥肌も、、、もう全身が粟立つってこのことかと思う程にザワザワしてる。
化け物の木を絶望して見上げていると、人の歩く音が聞こえた。
心底不気味だったけど、もう恐怖で気が狂いそうだったから音の方向に叫んだ。

助けて!
ここはどこなんだ!

足音が止んだ。
俺は助けてと叫びながら足音の方に進んだけど、誰もいない。

急に真後ろから足音がした気がした。
振り向くと人影が立っていた。

これが本当に人の影。

顔も何もシルエットとしか認識できない。
もう何が何だかわからなかった。

背丈は同じくらいだったけど、頭と指が異様に細くて長い。
変な呼吸音と地鳴りのように低い鳴き声みたいな音を出していた。
とにかく何より、その影を認識した瞬間頭痛と足の傷の痛みが増した気がして敵意を感じた。

もう混乱しすぎてプツッと何かが切れた。
正直あんまり覚えてないけど俺は絶叫しながら攻撃した。
全身全霊で2、3回突きを入れた気がする。
両拳に柔らかい(毛皮っぽい?)感触が残った。

足が痛かった。

気がつくと知らない街の公園に立っていた。
公園というか広場というか、、、住宅街にぽっかり空いた空き地みたいなところだった。
当たり前にある街灯や明かりのついた家をを見た瞬間に安心して気を失いそうになった。

チャリがない。
携帯はある。

マップは化け物の木に居た場所で指していた位置と同じ位置を指していた。
つまり正常に動いていた。

足の出血が尋常じゃなく、血のシミがすでに足首まで広がっていた。

救急車は自分で呼んだと思う。
通行人かもしれないけどもう覚えてない。

左ひざの傷は引っ掻き傷のように2本の線状になっていて、医者にはなんでこんなになるまで放っておいたのか!と、ちょっと怒られた。

壊死しかかっていたらしい。
言うまでもなく長時間放っておいた訳じゃない。
傷の範囲は小さいけど深かったようで、治るのに大分かかった。
3年経った今でも時々痛む。

都心に近い心霊とかそういうのと縁遠い土地柄やおれの普段からの大袈裟な性格も相まって信じてくれる人はいないが本当の話。
2度と怪しげな小道には入らないと誓った。

あ、チャリは今も見つかってない。
長くてごめんね。

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