オカルト話ではありませんが、神奈川県に暮らしていた時の事です。
箱根の山道で黄色いビックスクーターが横転しているのに出くわしました。
カーブで対向のトラックにぶつかってはね飛ばされたのです。
愚かにもヘルメットをしていなかった若いライダーは、後頭部を割って赤い脳味噌を周囲にまき散らし、手足の骨を折りながらも、まだ息がありました。
トラックの運転手に怪我はなく、動転しながらも無線で救急車を呼ぶよう怒鳴っていました。
私は二次事故を防ぐためビックスクーターを路脇に押しやり、重傷のライダーを励ますべく、「すぐ救急が来る、名前と住所を教えてくれ」などと呼びかけを続けました。
彼は唸るばかりでしたが、突然「婆ちゃ!こんな所まで来てくれたんか!」と一言。
しかし、そうはっきりと叫ぶと、それっきり動かなくなりましたした。
ご遺族によれば、事故の日はたまたま彼の祖母の命日でもあったという事です。
彼は死に際に懐かしい祖母の幻覚を見たのか、お婆さんが本当に迎えに来てくれたのかは分かりません。
しかし、この悲しい出来事は、その後数年に渡り、私を苦しめる思い出となりました。