逃げると追いかけられそう

カテゴリー「不思議体験」

ある夏の、一人旅の最中の出来事。

乗り継ぎの電車が4時間後だというのでその町で時間を潰すことに。
駅の案内を見ると、どうやら郷土博物館がある模様。
行ってみることにした。

ついてみると、町営(市営?)とは思えないほどなかなか立派な佇まい。
「すみません、大人1人」ちょっとびっくりした顔の受付の人。
まあ、平日の昼間に来る人も少ないのだろう。
料金を払って、私は中に入った。

誰もいない。
見事に貸しきり状態。
お目当ての土器や民具などをじっくり見、満足。
資料も揃っていて、かなり楽しめた。

2Fにも展示がある模様。
城のジオラマ等があるようだ。

階段を上った。

時間はたっぷりあるので、ゆっくりと見回る。
ふと、胸ポケットに入れてある携帯の着信ランプが点滅している事に気づく。
「ん?」携帯を開く。
電話もメールも来ていない。

それ以前に、他の客がいないのをいいことにそもそもマナーモードにしていない。
着信があれば、着信音が盛大に鳴るはずだ。

そのうち、点滅が止んだ。
買ったばかりなのに接触不良とは腹が立つ。
再びコースを巡っていると、妙な音が聞こえてきた。

ぴしぴしぴしっ

それと共に、急に冷えてきた。
なんだろう、冷房装置の音かな?
今日は確かに暑いけど、ちょっと効き過ぎだな・・・などと思っていると、ぴしっびしっ。

音がだんだん近づいてきた。
少々気味が悪くなり、この場を離れることにした。

階段を下りると、先程見なかった展示物があるのに気づいた。
階段の右手にあったのに、何故気づかなかったんだろう?
縄文時代の人々の暮らしを人形を使って展示してある。
見ることにした。

人形はかなりよくできている。
当時の埋葬を再現しているものまであった。
このブースは、ライティングのせいか、他の所より薄暗い。

さて、もっと奥に進もうか・・・と思ったとき、また、ぴしっぴしっ・・・。
あの音が聞こえてきた。
奥から。

加えて微風。
例えれば舞台に焚かれたドライアイスのスモークがすうっと客席に下りてくるような、かそけき冷たさ。

ほの暗い奥に目を凝らすと、何か黒い靄が蠢いている。
私はそれから目を背け、ゆっくりと出口に向かった。
走ると何故か追いかけられそうな気がしたので・・・。

館を出るとき、館員に挨拶しようと思い事務所を覗いたが誰もいない。
ロビーを満たす自然光が妙に寒々しい。
館を出て、午後遅くの太陽を浴びて、私はやっと息をついた。

話はこれで終わり。
博物館の名誉の為に言っておくと、展示物や資料は素晴らしかった。
力のある学芸員さんがやったんだろうな。

あの美しい火焔形土器をもう一度見たいのだが、流石に一人で行く勇気はない。

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