”それ”の痕跡が残っていた

カテゴリー「不思議体験」

家の目の前にスキー場があるんだが、夏場はそこにクワガタを取りによく遊びに行っていた。

その山にはゲレンデとは別にリュージュのコースがあり、そこが一番の穴場だった。
リュージュのコースはやや長い直線と意外ときついRのコーナーがハーフパイプ状に構成されていてそれなりに傾斜もある。

その日もそこに俺と友達の二人でクワガタを捕獲に行ったのだが、朝から収穫は無かった。

しばらくコースの中を上のほうに向かって進んでいると、コーナーの向こうで何かが動いたのを友達が目撃した。

よく蛇に出くわすこともあったのでその日もどうせ蛇だろう・・・と友達を諭してみたのだが、「蛇よりもでかかった!」とコーナーに向かって駆け出した。

当時ツチノコがブームになっていたこともあり「ツチノコかもしれない!!」と好奇心も手伝って俺も一緒に追いかけた。

子供ながらによく走ったと思うが、コーナーに辿り着いたときには蛇どころか、クワガタ一匹見つからず、鳥でもいたんじゃないか?ってことでまたダラダラと上を目指して歩いていった。

途中に第二スタート台があり、そこがいつもの休憩ポイントとなっていた。
スタート台から今来たコースを眺めつつ木陰で休んでいると、再び友達が俺に声をかけてきた。

「あれなんだと思う?」

俺が振り返ると友達はコースの上のほうを見て身じろぎせず何かを凝視していた。
俺もその視線の先を目を凝らしてみた。

明らかに蛇ではない何かがコースをこっちに向かってゆっくり進んでいた。
最初はコースに落ちた動物かと思ったが明らかに動き方がおかしい。
芋虫が這うように一定の間隔でもぞもぞ動きながら進んでいた。
だんだんそれを捉えることができてくるとなんとなく形がわかってきた。

「なんか人っぽく見えない?」

そう俺が言うと友達も「人・・・だよな・・・?」
そうつぶやいたと思うと、「正体確かめてくる!」といってスタート台からコースに飛び降りコースを上に向かって走り始めた。

俺はスタート台のスロープからズルズルと壁つたいに降りて友達の後に続いた。

友達の背中越しにもぞもぞ動いていた”それ”がこちらの気配に気づいたのか向きを変えたのが見えた。
友達もそれを見て足を速めた次の瞬間、その物体は複数の黒い影みたいなものに変わって、リュージュのコースの両壁をシュルっと上って消えた。

俺は友達に追いつくと「正体みたか?」と聞いたが友達は「いやわからん・・・」とだけ言った。
とりあえず二人でそいつがいたところまで行くことにした。

それが消えた地点から上のほうに向かってコース上には蛇の抜け殻のカスみたいのが続いていた。
それを見て二人とも急に怖くなって大声を出しながらコースを爆走して山を降りた。

特にその後怪異の類には苛まれていないので、悪いモノではなかったのかな?と思っている。

そんな30年以上前の話でした。

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