霊のはなしになるが。
今から約十年前。
大学生だった俺はクラブの合宿で兵庫県の山奥のホテル(冬はスキー客用になる)に泊まっていた。
その日は合宿最終日の前日の夜で、練習日程はすべて終わっていたので、消灯後も同じ部屋の仲間でマッタリ語っていた。
夜中の24時近いということもあって、だんだん語りながら仲間たちは一人また一人と眠り、最後の3人だけになったとき、霊感の強いやつが「怖い話でもするか」と言ってきた。
実際すごい体験ばかりで、久々にそいつの話が聞けると思い、3人で怖い話をすることになったが、すぐに一人は寝てしまった。
外は瀟々と雨が降っている。
窓は閉めているがカーテンは開いていた。
朝日を入るようにしておくと、自然に気持ちよく目が覚めるからだ。
そいつの怖い話はネタが尽きることなく、俺が1つ話せばそいつは3つ話す感じで夜中のまあ1時半くらいになっただろうか。
ふとそいつがこう呟いたんだ。
「なぁ、さっきから話が霊の場面になるたんびに、良いタイミングで稲妻が光るんだけど、なんかタイミングよすぎて嫌だよな」
それを聞いて、俺は「はぁ?」と思った。
実際口に出したが。
俺:「いやいや、全然、そもそも雷鳴ってないよ」
当然、稲妻など一度も光っていない。
だがそいつは、俺の言葉が信じられないようで、「いや、光るってのは、部屋が光るって訳で、光だから、物理的に部屋も明るくなるはずで、そうだよな?」と。
ようするに、稲妻が光るたんびに、部屋が真っ白く明るくなっているということが言いたいのだ、そいつは。
しかし、いくら力説されても光っていないものは光っていない。
俺はそういうと、彼は寝ているはずのもう一人の友人に、「なあ、○○は、さっきから聞いてどう思った?」と話を振る。
俺は「そいつ寝てるよ?おまえが最初の話を終わったぐらい」というと、「顔をこっちに向けているのに?」と聞き返す。
俺は見てみたが、布団を被ってスースー言っている。
顔は・・・隠れている。
俺は一言、「とりあえずもう寝ろってことだろうな。」と言い、怖い話は止めるよう言った。
俺はそう言って話を切り上げ、そいつもそれに反対はしなかった。
ただ、お互いに寝ようと布団を被る前、そいつの動きが一瞬止まり、「手・・・・・」と言った。
俺が「あ?どしたん?」と聞くと、何でもないと言ったが。
次の日の朝か昼、そいつに前夜のことを聞くと、「ああ、あれか・・・」と言った。
だいぶ疲れている様子で、詳しく話したくなさそうだった。
俺もその様子を見て、「手」のことは聞けないと思った。