今年の夏。
家族旅行(家族構成は夫、私、息子です)に行った時に体験した不可解な事を話します。
不可解な出来事が起きたのは五泊六日の旅行の五日目のこと。
激しい雷雨のために市内観光を打ち切り、滞在していた旅館へ帰った直後のことでした。
時刻は午後五時前。
私と息子は旅館の部屋でゆったりしていました。
その時夫は雷雨の中、街中のコインランドリーへ向かっていました。
旅館にはコインランドリーがなく、汚れた衣服を洗濯するため外出していたのです。
夫が出て行ってしばらくたった頃でした。
私の携帯電話(未だガラケー)に一本の電話がかかってきました。
携帯電話のサブディスプレイ(背面にも画面がついているガラケーなんです)を見ると夫からだということが分かりました。
しかし、ここで私は違和感を覚えました。
夫の名前の横に見慣れないアイコンが二三、浮かんでいたからです。
アイコンには消音と表記されており、今までサブディスプレイにそんなアイコンが表示された記憶はありません。
その時の私は「なんだこれ?」程度の関心しかなく、すぐに夫からの電話に出ました。
ところが、「もしもし?」という私の呼びかけに夫は答えませんでした。
聞こえづらいのか?と思って、もう一度呼びかけますが、電話先からの応答はありません。
ディスプレイには通話中と表示されたままです。
その後も何度か呼びかけましたが、結局夫の声はおろか、少しの物音も聞こえることはありませんでした。
そこで一度、電話を切り夫にかけ直してみました。
今度は夫に繋がったので、先ほど電話した用事は何だったのか尋ねてみました。
すると、夫は何のことかわからない様子で「別に電話なんかしてないし、しようとすらしてないぞ」という旨の言葉を返すのみ。
糞がつくほど真面目な夫なので無言電話のイタズラの類いでないことは確かでした。
とにかく、一度夫との通話をやめて、携帯電話の通話記録を確認してみると驚くべきことがわかりました。
今しがた夫と通話した記録は残っているのですが、数分前の夫からだと思われる無言電話の記録はなかったのです。
夫からかかってきた電話は無言で、さらにその通話記録はなく、本人もかけた覚えはないと言っています。
そうなると急に寒気がしてきました。
雷雨だったのがよけいに不安を煽ったのかもしれません。
帰宅途中、夫に何か起こるのでは?と怯えていたところで、普通に夫が帰ってきました。
早速、先ほど起こった不可解な出来事について報告すると、やはり夫は電話した記憶はない模様。
一応、夫の電話を見てみましたが、通話記録は残っていませんでした。
家族で話し合いをした結果。
例の無言電話は父をよそおった何者かのイタズラという・・・なんとも恐ろしい結論に至ったのですが、そこで息子がぽつりとつぶやきました。
息子:「消音・・・・・・ってアイコンが出たってさっき言ってたよね?」
一応家族にも話ついでに見たこともないアイコンが表示された事を言ってありました。
私がうながすと息子は話を続けます。
息子:「消音って、つまり音を消すって事だろ?音を消す・・・・・・。夫を消す」
息子:「まるで誰かからの脅迫みたいだ」
息子はそう言ってけらけら笑いましたが、私は背筋に寒気が走ったことを覚えています。
・・・・・・考えすぎでしょうか?
四ヶ月たった現在、夫はケガをするわけでも病気になるわけでもなく以前と特に変わらぬ生活を送っています。
しかし、私はあの雷雨の夕方の事をたまに思い出してしまいます。
あの無言電話は、消音というアイコンは、一体何だったのか・・・。