何年か前、用事があり最寄りの駅まで自転車で行った。
家の目の前には大きな川が流れているんだが、その中に車が突っ込んでいた。
確か白い車で、ワンボックスだった。
何人も川べりに人が集まっていて、2、3人の服がずぶ濡れだった。
「ああ、車に乗ってた人かな」
そう思って特に気にも留めずにその場を通り過ぎた。
夕方帰ってきて真っ先に耳にしたニュースは、その車に乗っていた人が亡くなったというものだった。
2人いて、一人は既にお亡くなりに、もう一人も意識不明で、絶望的だと。
2人とも、救出されたのは警察が来てからだった。
私がそこを見たとき、警察は、いなかった。
あの時、2人はまだ生きていて、あの車の中で必死にもがいていたんだろうか。
その日は近所で一家心中まで発生した日で、私の生涯の中で最も後味の悪い日となった。