当時住んでいた県は過疎化と市町村統廃合のお陰で廃村やら廃墟やらも多く、急勾配の旧道を好んで走るドMな人種であった私はそういった場所に行き着くこともままあった。
廃墟好きな私としては嬉しい限りであるし、県内の廃村は大体把握していた。
ある日の練習中もひたすら山中へ、旧道へ、と走り続けた結果、数戸の廃墟と公民館か、学校らしき建物のある場所に出た。
が、その周辺に有名な廃墟があると耳にした事はないし、何より日が暮れかかっていたので、後日探索しようとその日は其処で折り返した。
帰りも地図要らずで、「良々、道も覚えているな」などと思ったのだが、いざ帰宅後地図を確認するとそんな集落は見当たらない。
衛星写真を確認しても見つからない。
そもそも、私の記憶にあった道が途中から無い。
記憶違い、と言われればそれまでであるし、私自身もそう言い聞かせて過ごして来たが、ふと思い返すこともしばしば。
日が暮れることを恐れずにあの集落を探索すれば、或いはもっと過激な経験が待っていたのだろうか。
怖いもの見たさというのは恐ろしいものだなぁ、と思う。