樋口関太夫という者が言い伝えを無視し、家来たちを引き連れて土佐山北の山に入ったところ、17,18歳程度の女性が関太夫を指差して笑っていた。
次第に笑い声が高くなり、周りの石、植物、水、風までもが大笑いしているように笑い声が轟いた。
関太夫たちは慌てて逃げ帰った。
家来たちは麓で気絶したものの、関太夫はどうにか無事帰還した。
関太夫が死ぬまで、あの笑い声は耳に残っていたいう。
なお、文化時代の土佐の地誌『南路志』に、これとまったく同じ物語があるが、題は「笑い男(わらいおとこ)」であり、登場する妖怪は女性ではなく、十代半ばの少年とされている。
逃げ帰った関太夫が後にその笑い声を思い出すときには、耳に鉄砲を撃ち込まれたような音がしたという。
「笑い女」の名の妖怪は、同じ高知の幡多郡宿毛市と土佐郡土佐山村にも伝わっており、夜の深山で姿を見せずに笑い声をあげるものといわれる。
芸西村白髪では、タカサデ山という場所に2人の老婆が山菜を採りに行くと、若い女が現れて笑い出し、老婆たちもつられて笑い、女がいなくなった後も笑いこけ、その挙句に何日も熱病に侵されたという。
香我美町(現・香南市)では、笑い女を退治した際に用いたという剣が、土居城の跡地にツルギ様という祠として祀られている。
土佐山村(現・高知市)では、笑い女は麦の熟す時分に現れるという。
西土佐山村では、山女郎が人前に現れて大笑いし、一緒に笑うと食われるといわれる。
タヌキが笑い女の正体とされることもある。