古い工場の話。
そこの工場では、いつも夜になると変な音が聞こえてきたらしい。
ぺちゃくちゃと早口でしゃべってるような、なにかを食べてるような音。
まあ、古い工場だから配管を伝って遠くの音が聞こえても不思議ではないし、近くに大きな道もあるから結構な騒音がしてたらしい。
夜中でも荷物の搬入搬出はあったし、おまけに近所には野良猫が大量にいたから、夜中に静かな方が不気味な場所ではあったたしいけど・・・。
で、そこに本社から新人が転勤してきた。
その新人ってのが、結構いい大学を出た人で、将来の幹部候補として現場の経験を積む為にその工場に来たらしい。
その、新人が遅番で夜中まで仕事をしていた時も当然、例の音がした。
それを聞いた新人、いきなり立ち上がって帰ってしまった。
新人が一人くらいいなくなっても仕事に支障はきたさなかったらしいが、さすがに仕事中に帰るのはまずい。
翌日、工場長に呼ばれた。
で、新人の言うことには夜中に何人もの人間の話し声が聞こえた為、怖くなって逃げ帰ったと言う。
しかし、一緒に仕事をしていた人間は何も聞いていない。
仕事が嫌で嘘をついているかと思い、工場長がさらに問い詰めたところ、「確かに聞こえた」と言う。
ただ、それは日本語ではなく韓国語だったと。
最初はラジオかなにかの音だと思ったが仕事場にラジオはないし、外からではなく室内から聞こえたと。
例のぺちゃくちゃいう音は韓国語で話す声だったらしい。
ただ、その工場では韓国語が理解できる人間がいなかった為誰も気にしていなかったけど。
その新人ってには、幸か不幸か韓国語がわかったんだそうな。
その後は、その新人は深夜にまで勤務時間が延びない、早番だけにシフトを固定して、じきに転勤していった。
ぺちゃくちゃいう音は、今でもするらしい。
で、この話を聞いたとき、当然ながら戦前に朝鮮人が日本に連れて来られたって、話を連想したけど、さすがにその工場もそこまは古くないってことだし、その周辺に朝鮮族がいたって話しもないらしい。
なんなんでしょうね。