その時は異次元の世界にいます

私は鈴の音が嫌いです。

小学生のころ、学研の「科学と学習」を読んでいたときに、小学生の怪談の中で、鈴の音がしてから、異次元の世界に連れ去られてしまうという話があったからです。

その話を読んでから、クラスメイトの女の子が鞄につけている鈴の音や、近くに住んでいる女の子がキーホルダーに持っているアクセサリーから鈴の音が鳴っているのも嫌な気分になったものです。

もちろん、生活している中では鈴の音も聞くこともあるので、多少の耐性がついていたとはいえますが、やはりその音を聞くとドキッとしたものです。

小学6年生のころまでは、夜中に尿意を催すと母親に言って一緒にトイレまでついていってもらうという体たらくでした。

そんな怖がりが中学、高校と恐怖体験をしなかったことは僥倖といえるでしょう。
もちろん疲れからくる金縛りや怪異現象もありましたが、ごく普通の高校生活をすごしました。

大学受験も終え無事第一志望校に合格し、大阪での学生生活を満喫していたころの話です。

当時はそれほど裕福ではなく、6畳一間のワンルームマンションでの生活がスタートしました。
それなりに楽しい毎日を過ごしていたと思います。
学校の友人と飲んで、マージャンをして、夜の街に出てというごく一般的な学生生活だったと思います。

当時住んでいたのは狭い部屋でしたので、家具を設置すると部屋はほとんど埋まってしまいました。
そのため、スペースを確保するために高めのパイプベッドを利用し、そこで就寝しておりました。

分からない人のために説明すると、二段ベッドの二階部分だけあり、その下のスペースに家具を置けるようになっているものです。
一人暮らしの学生には非常に都合のよいものでした。
狭いながらも快適な日々を過ごしておりました。

その日もアルバイトを終え、くたくたになりながらも、入浴を終え、歯磨きをして就寝の準備をいたしました。
夏のことでしたが、それほど暑いわけではないのにうまく眠ることができません。

皆様も経験があることと思います。
1~2時間もやもやとしながらベッドに横になっていました。
それからやっと睡魔がやってきて、うつらうつらしてきたときのことでございます。

半覚醒といえるのでしょうか。
夢か現かどちらとも判断できない状態でしたが、たぶん夢だったのでしょう。
頭の中に鳥居が浮かびました。
神社にあるあの鳥居です。

真っ赤でそれほど大きくもなく、どこにでもあるような鳥居でした。
実家の近くにも神社は数多くありましたが、その鳥居は何個も何個も奥に連なっている鳥居です。

そう、ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、京都にある伏見稲荷様のようなものでした。
夢の中ではありましたが、何か不安な心持ちになりました。
すると一番奥の鳥居から「ちり~ん。」と鈴の音が聞こえるのです。

小中学校の頃には怖がっていましたが、さすがに大学生にもなれば、そのような音は怖がるはずもありません。
幼少時に鈴の音に怖がっていることもありましたが、今ではそう思うこともありませんでした。

しかし、その鈴の音は徐々に近づいてきたのです。
鳥居をひとつひとつこちらに近づいてくるように。

「ちり~ん。」
「ちり~ん。」
「ちり~ん。」

近づくにつれ音は大きくなっていきます。

夢であろう、夢であろうと自分では思っているのですが、やはり幼少時の恐怖がよみがえってきます。

今後、もし私の身に何かあった場合は異次元の世界に連れ去られてしまったと思ってください。

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