これは実際に体験した話だ。
地元に手招き地蔵と言われているものがある。
地蔵と言っているが地蔵ではなく、右手を上げた少女の石像だ。
その日、男三人車で肝試しに行く事になった。
仮に俺とAとBにしておく。
B運転、A助手席、俺は後部。
時間は午前1時を過ぎた頃だろうか・・・。
肝試しと言ってもどこに行くかは決まっていなかった。
俺:「どこいく?」
A:「どこいこ」
B:「どっかあるかなぁ」
5分後。
俺:「あ!手招き地蔵見に行こう!」
A:「何それ?」
B:「!?それ知ってる!中学のころ噂になったな!夜見に行くと手を振ってるように見えるんだけど、横に振ってたら帰ってよくて縦に縦に振ってたら・・・。」
A:「縦なら?」
B:「・・・知らん」
俺:「なら確認しに行くか!」
実はその石像があるのは墓地の中。
しかもど真ん中。
敷地内には車が入れるようになっていて石像を回るように円を描いて道が墓地の中を通っている。
ビビりながらゆっくりと入ってく。
入った途端になぜか無言。
木々がざわめき始めたように感じたのはこのせいだろうか・・・。
ゆっくり。
歩くほどの速度で進む。
三人で探すがなぜか見つからず反対側の道に出てしまった。
再チャレンジすることに。
先程より速めの速度だ。
すると今度はすんなり見つかった。
B:「あった!アレっ!」
俺:「え?どこ?」
A:「うぉっ!マジで手振ってるように見える!!」
俺:「え?ちょwwどこよ?」
AB:「動いてると、墓石の隙間からパラパラ漫画みたいになって手が動いてるように見えるな!そういうトリックか!すげぇすげぇ」
俺は完全に蚊帳の外だ。
二人は満足し、そのままドライブに変更。
興奮状態で噂が本当だったなと喋っていた。
が、二人が見た物に違いが発生したのだ。
何かと言うと、Aは縦に降ったように見え、Bは横に降ったように見えたのだ。
おかしい、おかしいと騒いでいると・・・。
B:「横に移動してるから普通は横に降ってるように見えるだろ?」
Aも俺も納得した。
納得したのはいいが、どうしたものか・・・。
普通に帰ってこれたから良いか!という事で一件落着した。
翌日、Aからメールが入った。
『昨日帰って寝ていたら金縛りになってどこからか軍歌が聞こえてきた。しかも英語。』といった内容だった。
読み終わった瞬間背筋に寒いものを感じた・・・。
なぜなら、少女の石像があった場所の周りは戦争で亡くなった方々の無縁仏だったからだ。