親父が一瞬だけ神隠しにあった話

これは俺の親父が小学生4年か5年かそこらの話。

親父の実家の結構近くに、とある神社があった。
梅林が有名で、結構格式高い神社らしい。

親父の行ってた小学校は、毎年全校生徒で遠足を行うのだが、その遠足ってのはその神社を抜けた先にあるハイキングコースを登って、山頂まで行くという。

引率の教師や他の生徒とともに親父も敷地を抜けて、ハイキングコースの入り口まで行ったのだが、急に腹痛がしたので隣の生徒に「便所行ってくる」と言って、神社の入り口傍のトイレにまで戻った。

親父にとって件のハイキングコースは遊び場みたいな物で、良く家族や一人で山登りしていたし、もう何年も行ってる遠足なのでルートを覚えていたから勝手に列を離れたのだとか。

用を足してすっきりした親父は、急いで後を追って山を登り始めた。
どうせ30分もしないうちに合流できるだろう・・・・・・と親父はたかを括っていたのだが、何故か1時間近く登っても合流できない。
それどころか、他の登山客や、挙句鳥の声すらも聞こえない。

前述の通り、何度も登っている山で、何度も登っているルートだから間違えるはずはなく、仮に間違えても大体の道は覚えているからすぐに修正がきくはずだった。
なのに進めば進むほど鬱蒼と木が茂ってきて、見覚えの無い景色ばかり出てくる。
その山は登山ルートがしっかり間伐されてるので、木々にかげって薄暗い場所は殆どないはずなのである。

と、親父が少々怖くなりながらも進んでいくと、少し開けた場所に出た。
奥の方に何か見えたので親父はそのまま進んだ。
其処にあったのは、二つの古びた祠だった。

とんでもない所に来てしまった・・・。

親父は急いで引き返した。

だが、引き返したはいいが、何故か途中で分かれ道にぶつかった。
確かに祠の所に行くまでは一本道だったのだという。
行く方向を迷っていると、ふと男の声が聞こえた。

「右に行け」

親父が辺りを見渡すと、誰もいない。
だが、気のせいかと思っているとまた、「右だ」と声が聞こえた。

親父はその声を信用し、右に進んだ。
すると、またしても分かれ道である。
と、また声が聞こえた。

「左に行きなさい」

今度はさっきと違い女の声だった。
父はまた信用して左へ進んだ。

それから、幾度か分かれ道にぶつかる度に、男か女の声が聞こえ、親父を導いた。
親父の感覚で、大体1時間ほど歩いた時、また目の前が開けて来た。

今度は妙にまぶしい。
親父は開けた先に出た瞬間、落ちた。

そこは、ハイキングコースの入り口からそう離れていない、広場だった。
だが、周りを見渡しても落ちるような場所は無く、親父はそのまま再びハイキングコースへと戻った。

それからわずか10分ほどで、先行していた生徒と教師に合流した。

親父が一番驚いたのは、時間が20分ほどしか進んでいない事だった。
登り始めたのが大体9時で、友人の腕時計を見た時は9時20分過ぎだったらしい。
つまり、登った1時間と出てくるまでの1時間が存在しない事になる。
その後親父に特に異変は無く、現在に至る。

親父曰く「山の神さんの神隠しにあった俺を、神社の神さんが助けてくれた」のだとか。

その神社では今4人の神様が祀られているそうだが、そのうち2人は他の神社から頂いた神様で元々の神様は2人らしい。

親父は、その神様2人が助けてくれたと思っている。
それが正しいかは分からないが、親父は今でもその事を感謝していて、遠足のあった毎年5月には家族揃ってその神社にお参りに行っている。

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