5年前に死んだ爺さんの話。
母方の爺さんは山の中に住んでいた。
一応道は通ってたけど、隣の家まで1キロ以上、電気は通ってるけどガスはなし、平成の世で竃と薪の風呂。
爺さんは元は東京生まれの結構なボンボン。
けど戦争で親をなくして親戚を頼って東北の山奥に移り住んだとの事。
そんな爺さんは、凄く頑丈だった。
生まれて一度も病院に行った事がなく、死ぬときまで歯が全部揃ってた。
だが火葬の時に不思議な事が起きた。
いつまで待っても火葬が終わらない。
流石に親戚一堂が係りの人に詰め寄る。
係りの人の言い分は、いくら焼いても骨が崩れないとの事。
試しに釜?炉?から出してみると、小学校の理科室にある骨格標本そのもの。
箸でガンガン突いても崩れない。
喪主の叔父さんと火葬場の人の話し合いで奥の部屋で金づちで砕く事に。
そんな頑丈過ぎる爺さんに生前に聞いた話。
「俺は若いときに、大きな鹿を助けた事がある。あれは山の神様で、御礼に俺を丈夫にしてくれた」
聞いたときにはフーンぐらいだったが、今にして思えば何となく信じられる気分になる。