昔小学生の頃の話だ。
コンビニが町内に1件もない田舎に住んでる俺は夏休みにはよく外で遊んでいた。
何所で何をするって目的を探すのも楽しみの一つにしていたんだ。
未だ外が暗く親も爺婆も寝ている時間に目が覚めてしまったので、こっそり家の外に出た。
家の傍には小さな橋がある。
特定されると嫌なので詳細は書かないが、秋には橋の周りでちょっとした祭があり、屋台も数十と出る。
俺は橋の方へ向かって歩いていたんだ。
そしたら前から何か小動物が向かってくる。
普通は逃げるんだがそいつは逃げずに向かってきた。
飼い主なしの1匹だけで散歩してる犬も居るようなところだったので人慣れしてるのかと思ってた。
正直猫だったのか狐だったのか記憶が曖昧なんだが、そいつは尾が2本あった。
驚いたが人懐っこいそいつを触ってたらもう1匹居たんだ。
そいつは更に尾が多かったこれも曖昧なんだが3か4本だったと思う。
暫くそいつらと戯れてから付いてくるもんだから一緒に橋へ行った。
そこにはそいつらの親と思わしき奴がいた。
そいつは更に尾が多かった。
5か6だったと思うがもっと多かったかも知れない。
ただよく聞く九尾のように9本ではなかったと覚えている。
妖怪図鑑なんてのを持っていたからその辺りは印象に残っている。
多分雌だ、母親だと直感で思ったのを覚えているが確証はない。
そこで何かを話したんだ。
動物と言葉が交わせる事にも俺は驚いたが、子どもだったのですんなり受け入れていた。
子どもが懐いているからか遊んだからかは判らないが、敵意はなかったと思う。
ただ話の内容は一切覚えていないし、気が付いたら家に居て朝になっていた。
だが布団で寝ていたわけでもなく家の外で突っ立っていた。
自宅と隣の家の間の細い通路の様な場所に居てなんでこんなところに居るんだと思った。
昨日の記憶が殆ど欠落していて覚えていたのはこれくらいなんだ。
寝ぼけていた訳ではなく、実際にあった事だと俺は思っているが、親や親しい友達にも何故か話す気にはならなかった。
小学生なんて何かあればすぐ周りに自慢したがるものなんだが、何故だろうか記憶の欠落、周りに話そうと思えないのはその猫だか狐だかの親に何かされたせいなのかと思っている。
尾が複数あるが猫か狐か定かではないので猫又、九尾の類なのかもよくわからない。
そういう経験や詳しい人が居たら教えて欲しいものだ。
それから20年以上経っているが今のところ何もない。
俺が何も関係がないと思っているだけなのかも知れないが、多分今初めてそいつを見たら俺はちびる自身がある。