ずっと呪われ続けていた

カテゴリー「怨念・呪い」

俺がよく行ってた、あまりたちのよくない一杯飲み屋に「サッちゃん」って呼ばれてる人が来てたのよ。

その人は男で60代。
頭が禿げて小柄。
ガラの悪い常連の中では言葉少なく、いつもにこにこしてたな。

しゃべるときは誰に対しても丁寧な口調。
けど、バカにされてる雰囲気でもなかった。

週に2、3回はそこに来てたが、つまみはいつも関東炊き。
銚子数本飲んで、10時過ぎには帰っていく。

堅気ではねえんだろうが、人のいいオッサンて感じだった。
その人があるとき「また山田さんが来るようになった」ってぼそっと言った。

俺は隣りにいたが、意味わからないんで黙って顔を見ると、サッちゃんは「ほら」と言って上着を脱ぎ、シャツをずり下げて首を見せた。

すると、両肩の彫物の上の首のまわりが、赤くアザになってたのよ。

「ひでえな、アレルギーかなんかか?」
そう聞いた。

「いや、夜中に山田さんが首絞めてくるんで」
と続けて、「今晩も来るのかなあ、・・・嫌だなあ」って言い残して帰ってった。

サッちゃんは次の日も来て、また俺の隣に座ると「山田さんがなあ、どんだけ謝っても許しちゃくれねんだよ。困ったな、ああ、嫌だ嫌だ。俺も覚悟決めにゃあかんかなあ。気がのらないなあ」って言いながら、上着をはだけて見せたのよ。

したら、内ポケットに白い木鞘が見えて、ドス呑んでるんだってわかった。

俺が「おいおい、危ねえなあ」と冗談めかして言うと、低い声で「お前に何がわかる!」って吐き捨て、急に立ち上がって、飲み食いせずに帰ってった。

そんときは普段と違う、なんとも言えない迫力があったんだよ。

その翌日から、サッちゃんは飲み屋に来なくなって、10日ほどして、死んだって噂が聞こえてきた。

それも自分で頸動脈を切り、部屋の天井まで血が飛んで酷いあり様だったらしい。

でな、マスターに前の話を少ししたら、元ヤクザで若頭までいったマスターは半笑いで、「あの人、なんでサッちゃんって呼ばれてたか知ってるか?」こう聞いてきたんで、「名前に幸(サチ)がつくんじゃねえのか?」ってかえした。

そしたら、マスターはますます笑って「それな、サッちゃんってのは殺人者の略だよ。若い頃に一人殺して、長くムショに入ってたんだ。だから、殺ちゃん」

俺「ええ!?誰殺したんだよ?」

マスター「ああ、飯場の元締めで、そういや、たしか山田って言ったなあ」

こう答えやがったのよ。

サッちゃんはずっと呪われてたんだね・・・。

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